なぜシリア内戦は終わらないのか?激化する3つの「戦争」

「イスラーム国」壊滅後の行方
末近 浩太 プロフィール

クルド人勢力による「独立」のための戦い

第2の「戦争」は、シリア北東部のクルド人勢力「西クルディスタン移行期民政局」、通称ロジャヴァによる「独立」のための戦いである。

ロジャヴァは、2014年1月に発足を宣言し、民主統一党(PYD)とその軍事部門である人民防衛部隊(YPG)・女性防衛部隊(YPJ)を中核とした。

ロジャヴァは、アサド政権ではなくISと対峙することに注力した。具体的には、米国が主導する「有志連合」の地上実戦部隊――「協力部隊」――として、「テロとの戦い」に主体的に従事することで、軍事面での支援と外交面での支持を取り付けてきた。

ロジャヴァの軍事部門であるYPG-YPJは、ISに対するアイン・アル=アラブ(クルド名コバニ)防衛戦(2015年1月)やラッカ解放作戦(2017年10月)の成功に大きく貢献した。

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米国は、2018年1月、ロジャヴァの実効支配地域にYPG-YPJを中核とする「国境治安部隊」を創設すると発表した。

これは、米国が国土の約28パーセント――豊富な石油資源と主要な農業地帯を含む――を対シリア政策の橋頭堡(きょうとうほ)として半永久的に確保することを意味した。

「国境治安部隊」の主たる任務は、「ISの復活の阻止」、すなわち、ISに対する「テロとの戦い」であるとされた。

事実、米国は、ロジャヴァの実効支配地域内に航空基地2ヵ所を含む11ヵ所の軍事基地の設置を完了していた。

しかし、その真の目的は、シリアにおけるロシアとイランのプレゼンス強化を牽制することにあった。

 

このことを浮き彫りにしたのが、イランに対する外交面での態度硬化であった。

ドナルド・トランプ大統領は、就任後まもなくイランとの核合意の見直しを訴え、また、同国を「共通の敵」とするサウジアラビアやイスラエルとの同盟関係の強化につとめた。

つまり、この時点で、米国の対シリア政策を支えてきた「テロとの戦い」は、そのターゲットをISからイランへと巧妙にシフトされたのである。

それは、ロシアがISと反体制諸派を「テロリスト」として意図的に混同し、「テロとの戦い」の名目で掃討作戦を正当化したのと同様のやり方であった。

ロジャヴァの側から見れば、実効支配地域の一定の拡大に成功した半面、ISとイランを「テロリスト」とする米国の都合による「テロとの戦い」に利用されるかたちとなった。