提供:国立科学博物館

ぼくたちはなぜぼくたちだけなのだろう第13回:化石をスキャンする

彼らはなぜ滅んでしまったのか?
かつて地球上には、ぼくたちと同じ「人類」の仲間がたくさんいた。彼らはなぜ滅んでしまったのか?

なぜぼくたちだけが生き残ったのか?

人類進化のホットスポット、アジアの化石発掘現場から始まる壮大な謎解きの旅!

2015年の年の瀬も押し迫った頃、海部さんからメールが来た。要旨は──CTスキャンするので、見に来ますか? ということだ。

これは見たい! さっそく上野の国立科学博物館を訪ねた。

一応念のために言っておくと、決して医療関係の呼び出しではない。スキャンされるのは、化石である。

サンギラン17号もスキャンされていた

上野に「マイクロCTスキャナ」と呼ばれる機械があって、それを使ってジャワ原人化石のデータを取るというのである。

ここで注釈。

海部さんの「研究室」は、上野ではなく、つくば市にある。国立科学博物館「筑波研究施設」といって、研究室および非公開の標本収蔵庫がまとまっている。
上野の本館は、科博の「表の顔」であって、研究機能はつくばのほうなのだ。

しかし、こと「CTスキャン」については、「表」の上野で行うことになっている。
なぜか?

海部さんに連れられて、マイクロCTスキャナのある部屋までたどりつくと、疑問が氷解した。というのも、それは「展示の一部」でもあったからだ。

場所としては、地球館の恐竜展示の奥。ティラノサウルスが鎮座する場所からせいぜい10メートルほどのところにガラス張りの(つまり、来館者から丸見えの)小部屋があり、そこでCTの作業をすることになっている。来館者が研究者の活動を垣間見ることができるように、という意図が込められているらしい。

CTスキャンの小部屋は地球館の恐竜展示のすぐ奥にある(筆者写す)
上野の国立科学博物館にあるCTスキャン用の小部屋。本物の標本がぎっしりと並んでいる(筆者写す)
このバッグでインドネシアのガジャマダ大学からの標本が運ばれた(筆者写す)

小部屋に入って、最初に目に入ってきたのは、やたら存在感のある古めかしい革製バッグと、デスクの上に並べられた標本群だった。

「インドネシアのガジャマダ大学から持ってきてもらった標本です。この革のバッグで、機内持ち込みで運んでもらって、マイクロCTでスキャンを終えたら、また持ち帰ってもらう、というやり方ですね」

貴重な標本だから、FedExか何かで送るというのはちょっとできない。革のバッグは年代物で、中には念入りにクッションが詰められていた。

そして、デスクの上にさりげなく置いてあるのは、すべて「本物」の標本。完形な頭骨も2つある。

この日、たまたま国立科学博物館の地球館を訪ねてティラノサウルスやステゴサウルスを見た人は、知らぬ間にとても貴重な、めったに見られないものを視界の端に捉えていたかもしれない。

ひとつひとつ解説してもらったので、写真に写っている並びでコメントしていく。

右手前にあるのがガンドン(新しめのジャワ原人化石が出る産地)で発見された脛骨(すねの骨)。

中央手前と左手前は、第9回でもふれた、海部さんが同一個体ものだと見抜いた立体パズルのように壊れた標本。中央のトレイの中にあるのはガジャマダ大学の所有で、左側にあるのはバンドン工科大学ものだ。

バンドン側の意に反して両方ともガジャマダ大学が所蔵しているという不思議な関係に長年あったのだが、海部さんたちが間に入ることで「雪解け」が起き、これからインドネシアの両機関と科博との間での共同研究することになった(このエピソードも第9回で紹介した)。

バンドン工科大学とガジャマダ大学が別々に所有していた割れた標本(サンギラン)。実はパズルのように合う、同じ個体のものであることを海部氏が発見した(筆者写す)

奥の並びは、右からブクラン(サンギラン地域の中の地名)標本、モジョケルトの子どもの頭骨、そして「ミスターX」と呼ばれている顎の骨(ナンバリングされていない標本)と、なかなかマニア度の高いものが揃っている。

ブクラン(サンギラン地域)の標本(筆者写す)
モジョケルトの子どもの頭骨(筆者写す)

なお、「顔がある」サンギラン17号や、海部さんも関わったサンブンマチャンの頭骨など、有名標本は、すでにマイクロCTでスキャン済みだ。