「住みたい街」人気の北千住を歩いてわかった厳しい現実

住民たちは「深みがなくなった」と…
現代ビジネス編集部 プロフィール

「子育てにこれほど良い街はない」

「ヴィークステージ北千住」を8年前に購入したという女性は、昨年生まれたばかりの子どもを抱えながら、こう語ってくれた。

ヴィークステージ北千住「ヴィークステージ北千住」の外観。交通の便の良さが素晴らしい。
 

「飲食チェーン店が増えたのは事実ですが、小さい素敵なお店が増えたのも見逃せませんね。駅前を中心に、少し離れた路地にも小さなお店ができて、街全体がお洒落になってきたと感じています。分譲マンションが増えて、子育て中のファミリー層も多くなってきているので、安心感も高まり、住環境はどんどん良くなってきていると思います」

「ママ友とよく話をするのは『学区を選び放題だよね』ということ(笑)。大学の雰囲気も身近にあってわかるので、将来の参考にもなります。電車がいろんなところにつながっているので、旦那の職場のある都心部はもちろん、ベビーカーに乗せて茨城や千葉にレジャーにも手軽に行けて、子どもを遊ばせるのにも最高です。子育てが終わるまではここを離れたくないよね、とママ友もみんな言っています」

下町の路地北千住駅から数分〜数十分のエリアには、下町らしい雰囲気ある路地がたくさん
北千住の銭湯門構えの立派な銭湯が商店街や路地裏に点在するのも下町らしい
北千住の野良猫人懐っこい野良猫がそこらじゅうに佇んでいるのも下町らしい

こうした旺盛な需要を受けて、駅前通り「きたろーど1010」沿いに新築分譲マンション「パークホームズ北千住アドーア」(13階建て、2019年3月入居開始)が建設中だ。低層階にイトーヨーカドーが併設される便利さと、北千住駅から徒歩5分、5路線利用可能という交通の便を売りに、完売まで残り1邸という人気ぶり。取材中にも、子育て世代の女性がマンション広告をスマホで撮影している姿を見かけた。

パークホームズ北千住アドーア駅前通りのアーケードそばに所狭しと建設中の「パークホームズ北千住アドーア」

「多様な文化が混在」は期待しすぎ

「北千住」という街のイメージを評価する軸は、大まかにいって二つあるようだ。

一つは、宿場町通りや、東京の飲ん兵衛が聖地として詣でる西口「飲み屋横丁」のような、歴史ある下町の風情を愛する人たち。もう一つは、古い戸建ての集まる下町ゆえに据え置かれてきた比較的安価な住居費に加え、それを上回る交通の便を「割安でお得」と再評価する人たち。

東京スカイツリー住宅街からは東京スカイツリーの勇姿も見える

しかし、両者がちょうどいいバランスで良い街を作り上げていく可能性は、正直なところ、そう高いとは言えない。

大した品揃えではないが、雰囲気や会話を楽しめる老舗の商店。愛想がいいわけでもなく、このご時世にタバコの煙が漂い、人でごった返す飲み屋。下町の風情を愛する人にとっては天国でも、子育て中のファミリーにとってはどちらかといえば嫌悪の対象だ。「多様な文化が混在する街」と言えば聞こえはいいし、そんな将来を期待したくもなるが、世の中は必ずしもそんな絶妙のバランスで混じり合ったりはしないものだ。

大事なのは「住みたい街」「穴場だと思う街」といった聞こえのいい文句に踊らされることなく、現地に何度も足を運んで、住民に話を聞いて、十分なシミュレーションをくり返した上で住む街を決めることだろう。駅からの距離、部屋の向き、学校からの距離……そうした表面的な条件は、人工知能が計算の上であっという間に価格を割り出してくれる便利な時代なのだから、なおさらではないか。

人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。

これからは一人ひとりが新しい時代の「住まい方」を考える時代。現代ビジネス編集部は昨年秋、特別企画サイト『住まい方研究所』を開設しました。皆さんが住まい方を考え、選ぶための役に立つ情報を、さまざまな視点からお届けして参ります。