男性コメディアンが語る#Me Too

賞は、司会を務めたコメディアン、ジミー・キメルのモノローグで幕を開けた。

「われわれ(映画界)は『What women want (邦題ハート・オブ・ウーマン)』という映画を作ったけれど、主演にメル・ギブソンを据えた(メル・ギブソンには妻を脅すテープが流出した過去がある)」などのラインで笑いをとりながら、ジミー・キメルは映画界のセクシズムに長くに渡って言及。

#Me Tooムーブメントに敬意を表した上で、女性監督による作品が全作品の11%にすぎないことを指摘し、それは「ナッツ(クレージーと同意のスラング)だ」と言った。

また、アシュリー・ジャッドミラ・ソルヴィーノなど、ワインスタインのセクハラの対象となったうえに、それに反抗して「ブラックリスト」に乗せられた被害者たちが発言の機会を与えられたことは画期的だった。

さらに、『スリー・ビルボード』で主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドが受賞スピーチのなかで、今年ノミネートされた女性の映画人たちに立席を促し、拍手喝采を浴びた瞬間は、#Me Too、#Time’s upの今を象徴するものだった。

アカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクド―マンドはスピーチで、赤いドレスに身を包んだメリル・ストリープを筆頭に、ノミネートされた女優たちに呼びかけた Photo by Getty Images

同時に、レイプされたと名乗り出た被害者と法廷外で和解した経験のあるバスケ選手のコビー・ブライアントや、前出のゲイリー・オールドマンが受賞したことには、インターネットから反発の声があがった。

アカデミー賞もまた、#Me Tooから始まった#Time's up運動が、まだ生まれたばかりの段階にあって、先の長い運動であることを示唆した

フランシス・マクドーマンドはスピーチを「今日持って返ってほしい2語があります。『inclusion rider』です」と締めくくった。

映画界の外では、聞き慣れないこの言葉は、契約書にあるinclusion(多様性の受け入れ)ついての付帯条項を指す。需要の高い俳優は、出演契約の交渉の際に、他のキャストやクルーの選定における多様性を主張できる。マクドーマンドはスピーチの場を使って、その付帯条項を利用することを呼びかけたわけである。

また、会場の外で、アシュリー・ジャッドとともにインタビューを受けたミラ・ソルヴィノは、カリフォルニアで今準備されている職場でのセクハラから女性を守る法案について語り、「この運動は、女性にとって公平で安全な世界を達成するまで終わらない」と宣言した。

ワインスタインの会社を助けたのは女性

こうして#Me Tooが生まれてから初めてのアワードシーズンは幕を閉じた。けれど、この運動はいっときの社会現象ではない。働く場での不公平が是正され、セクハラや嫌がらせが撲滅されるまで、変貌しながら続いていくのだろう。

アカデミー賞の直前に、ひとつ大きなポジティブなニュースが飛び込んできた。今回の一連の出来事を受けて、経営難に陥り、また刑事捜査の対象になっていることが障害となって買い手が見つからず、破産申請秒読みと思われていたワインスタイン・カンパニーが、女性の投資家が率いるグループに救済されることになりそうだというのである。

長い戦いの物語の、少なくともひとつのチャプターが、女性ヒーローの登場によって幕を閉じようとしていることが象徴的だった。