グラミー賞の候補者の9割が男性?

同じく1月に行われたグラミー賞でも、metoo/timesupの存在が色濃くにじみ出ていた。

アーティストで、日本で映画『ドリーム』が話題となったジャネール・モネイが「私たちを黙らせようとする人たちには、この2語を。『Time's Up』。不平等賃金、差別、あらゆるタイプのハラスメントの時代は終わった。権力乱用にも終わったと言おう。なぜならハリウッドやワシントンだけじゃない。この業界でも起きているのだから」とスピーチし、拍手喝采を浴びた。

スピーチしたジャネール・モネイ。主演した映画『ドリーム』は黒人差別の時代、自らの能力でNASAでのキャリアを築いた女性を描いた  Photo by Getty Images

また元プロデューサーを虐待で訴え、泥沼の訴訟合戦を経験したケシャが、その経験から書いた曲を、シンディ・ローパー、ジュリア・マイケルズほか、多数のヴォーカリストを携えて歌ったシーンは圧巻だった。

けれどこうした一連のエピソードとは対照的に、白人男性たちがトップを独占する業界が、簡単には変わらないであろうことを露呈する事実も多数あった。

たとえばゴールデン・グローブ賞の際には、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラの被害者であることを公表したアーシア・アルジェントロザンナ・アークウェットなどが招待されなかったことを明らかにしたうえ、また過去にセクハラ疑惑のあるゲイリー・オールドマンが男優賞を受賞したことが批判された。

グラミー賞では、ベスト・アルバム賞にノミネートされたアーティストが、唯一の女性だったLordeをのぞいて全員パフォーマンスの舞台を与えられたこと、ベスト・ポップ・ソロ・パフォーマンス賞の候補者が、ケリー・クラークソンケシャレディ・ガガピンクと5人中4人が女性だったのに、会場にいなかった唯一の男性アーティスト、エド・シーランが受賞したことなどが批判された。

スピーチもしたジャネル・モネイは、2013年から2018年にかけてすべての賞の候補者の90.7%が男性だったとツイートした。

シンディ・ローパー(写真前列左から2人目)とともに、ケシャ(同3人目)はゴールデン・グローブ賞の黒のドレスと対照的に白のファッションで集まり、グラミー賞で圧巻のパフォーマンスを見せた Photo by Getty Images

Time's up基金に20億円以上の寄付

グラミー賞のあと、アカデミー賞が行われるまで約1ヵ月のブランクがある。その時点までにTime's Upの基金は2100万ドルを調達した。

多くのアーティストやエンターテイナーたちが大口の寄付をしたが、ミア・ファローと結婚していた時代にファローの養女ディランに性的虐待を行った疑いの消えないウッディ・アレンの新作に出演したレベッカ・ホールティモシー・シャラメがギャラをそっくり寄付したことも印象に残っている。その間も、ずっと、次から次へと各界の大物にセクハラや性的暴行を受けたという被害者が跡を絶たなかった。

そしてアワード・シーズンの締めくくりとなるアカデミー賞は、始まる前から「#Me Tooをどう処理するか」が注目されていた。ニューヨーク・タイムズ紙は、プロデューサーや放映権を持つABC放送を取材し、「タイムズ・アップを尊重し、彼女たちのメッセージが届くことを望んでいるが、衝動的ではなく計画的にやりたい」という談話を紹介した。

男性が圧倒的に優位なうえに、ワインスタインというモンスターを作り出した業界が、どう出るかが注目されていたのだ。