瀕死だった「国産ウイスキー」が一転、世界に絶賛された理由

冬の時代を越えて
古賀 邦正 プロフィール

たとえば発酵においては、その成果をより豊かなものにするため、酵母と乳酸菌が十分に力を発揮できるように、発酵槽をステンレス製のものではなく木桶にした。

蒸留においては、「ポットスチル」とよばれる銅製の蒸留器の形状によって原酒の性質は変化する。多彩な原酒をブレンドすることでウイスキーの可能性は広がっていくのだが、そのためにいま使っているポットスチルを入れ替えるなどということは、面倒だしコストがかかる。

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しかしジャパニーズの現場では、必要とあれば積極的にポットスチルを入れ替えてきた。これはスコッチでは考えられないことだ。

貯蔵のための樽にしても、ミズナラ樽をはじめ、スギ、ヒノキ、ヤマザクラなど、さまざまな材を鏡板に使って試している。そして樽材の違いによる品質の特徴を、神経を研ぎ澄ましてかぎ分け、それぞれに個性を見いだし、その個性を前向きに評価して、活かすように知恵をしぼっている。

スコッチでは、それぞれの蒸留所は独自技術の踏襲を第一に考えていて、あえて大きな変革を試みることは少ない。伝統へのプライドとこだわりが、そうさせているのだろう。また、そもそも蒸溜所の数が多いので、あえて多様な原酒の品揃えに力を注ぐ必要もない。

 

しかし後発のジャパニーズでは、多様な品質の原酒を、限られた数の蒸溜所でまかなう必要があった。そのためには必然的に、さまざまな創意と工夫を編み出していかなくてはならなかった。

創意と工夫は、日本人のお家芸でもある。日本人がさまざまな「ものづくり」において見せる特質が、ここでも発揮されている。そしてウイスキー造りにおいては、ほんの些細な工夫でも、多岐にわたる工程と、長い時間の積み重ねを経ることで、結果として大きな品質の違いとなって表れてくる。

そのようにして造りだされたのが、ジャパニーズなのだ。ジャパニーズウイスキーとは日本で造るウイスキーのことではなく、日本人が造るウイスキーのことに違いない。