中島みゆきと桑田佳祐が芸能界で40年生き残ってきたワケ

これだけ浮き沈みの激しい業界で
週刊現代 プロフィール

尊敬されたくなんかない

また、大御所と呼ばれる立場になっても、猥雑で楽しい曲を作る。『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)の著者で音楽評論家のスージー鈴木氏が言う。

「いまもラジオではリスナーと電話で話して下ネタを言っていますし、コミックソングのような曲も歌う。大衆を喜ばせたいということが桑田さんの本質だと思います。

ここが桑田さんと山下達郎さんの違うところ。山下さんはラジオ番組でも決して下ネタは言わず、音楽の高度な分析や知識を披露する。山下さんはエスタブリッシュ、桑田さんはエモーショナル、この対比だと思いますね。

矢沢永吉さん(68歳)も60代で第一線にいるアーティストですが、桑田さんのほうがより大衆的でメディアの露出も活発です。矢沢さんはカリスマ性が強い方ですが、桑田さんは自らカリスマになる人ではない。

むしろ彼は尊敬される対象になることを、ずっと避けてきた。言ってみれば、ビートたけしさんがテレビでちょんマゲのカツラを被ることに近いですね」

 

サザンには、死や終末観を歌った『はっぴいえんど』('15年)という曲もある。この曲では自らの老化を表現している。これは'10年に食道がんから回復した桑田だからこそ歌えるテーマでもある。

「他のミュージシャンは自分が枯れてきたことをテーマに歌わないでしょう。自らを大きく見せたりせずに、等身大の自分をエロも含めて歌で表現している。さらにがんを患った経験が、歌詞の深みに繋がっているような気がします。

両者のラジオ番組でのトークが象徴的なのですが、桑田さんと中島さんは、二人とも人間味や感情を押し殺すことなく、内面をいつまでも生々しくさらし続けている。それが愛され続けている理由だと思います」(鈴木氏)

かつて桑田は「面白く枯れながら自分に正直でいたい」と語っている。そんなスタンスに聴き手は魅了される。

ベテランになればベストアルバムを頻繁に発売するが、中島と桑田はその数が他の歌手と比べると少なく、オリジナルアルバムを定期的に発表している。

「中島みゆきさんもそうですが、桑田さんは声の衰えもほとんど見られません。声質もちがう。彼らの声にしか出せない音があるんです」(宮治氏)

まさに生涯現役。二人の新作は、これからも日本人の心を震わせ続ける。

「週刊現代」2018年3月10日号より