中島みゆきと桑田佳祐が芸能界で40年生き残ってきたワケ

これだけ浮き沈みの激しい業界で
週刊現代 プロフィール

暗い、重い、だから良い

中島とよく比較されるユーミンは、還暦を超えてからシングルCDを発売していない。'12年の『恋をリリース』は、オリコンチャートの最高順位が34位、売り上げは5000枚にも届かなかった。

竹内まりや(62歳)や五輪真弓(67歳)もかつてはライバルと呼ばれたが、現在は中島ほどの存在感はないだろう。なぜ中島だけが特別なのか。

中央大学文学部部長で、流行歌の研究も行っている日本文学者の宇佐美毅氏は、中島の歌が長く広く愛される理由は「歌詞の強さ」にあると語る。

「中島さんの言葉には重みがあり、人生について深い問いかけをどの曲にも込めているので、時代や世代に左右されずに心に響き、後々まで印象を残す。だからいまも歌が生き残っているんです」

宇佐美氏によれば、中島の作詞には2つの特徴があるという。一つ目は、女性の感情をリアルに描き出していること。もう一つは、人間の本質を根源的・哲学的にえぐり出していることだという。

「中島みゆきと言えば、『失恋ソング』のイメージが強い。ですが、いわゆる演歌の世界のような図式化された失恋の描き方ではないんです。

たとえば、『悪女』('81年)では、失恋した男性への想いよりも、女友達に電話で強がりの芝居をしている女性の複雑な気持ちが描かれています。

『あした』('89年)では、人間が外見の姿を失って『心』だけになっても、それでもなお『愛』は存在するのか、と問いかけてくる。

描かれる世界は重くて暗い。それが軽薄なポップカルチャーに飽き足らない若者にも支持されていると考えられます」(前出・宇佐美氏)

 

ユーミンや竹内まりやと比べても、中島の歌詞の個性は圧倒的に濃い。

ヒット曲の分析を行う音楽マーケッターの臼井孝氏はこう語る。

「中島さんの詞は独特で、彼女の作品でしか使われていない言葉が多いのです。工藤静香さんに楽曲提供して大ヒットした『黄砂に吹かれて』('89年)には〈微笑ずくで終わらせた恋〉というフレーズがあります。

また、『慕情』には〈生き残らない歳月〉という歌詞がある。聴き手に考えさせる、耳に残るワードセンスが天才的なのです。

『重き荷を負いて』('06年)には〈頑張ってから死にたいな〉という詞があります。聴けば『誰しも生きている間は使命がある』という意味合いだと分かる。こうしたしみじみとした深さも普遍的な魅力になっています」

そうした詞を最大限に生かしているのが、メロディだ。『時代』など編曲を担当した作曲家の西崎進氏が解説する。

「多くの日本のポップスは、メロディに時代の最先端の流行を取り入れがちなので、10年もたてば古く感じてしまいます。

一方、中島さんのメロディは独特な抑揚がありますが、変に技巧に走らないシンプルさがあります。メロディが強すぎると、心に詞が響いてこない。

また、中島さんは詞とメロディをほとんど同時に作っているそうです。そのため、メロディのために伝えたい詞を犠牲にして削ることがないので、完成度が上がっていっているのだと思います」

メッセージありき。だからこそ、カラオケでも歌いやすく、脳裏に残る。