藤井聡太六段が「全盛期の羽生七冠」と闘ったら勝つのはどっちか

棋士・専門家が予想した
週刊現代 プロフィール

勢いか、経験値か

藤井は現在15歳、この春に高校へ進学する。ベテラン棋士と比べれば、まだまだ実戦経験は少ないが、深浦九段はこんなエピソードを明かす。

「昨年12月に私は藤井さんと初対戦しました。序盤・中盤から藤井さんのペースで形勢が悪かった。

一度トイレに行こうと席を外したときに、入り口に藤井さんのスニーカーがちょこんとあるのが目に留まったんです。そういえば、藤井さんはまだ中学生だな、と。

私には中学生の子供がいる。自分の子供のと同じようなスニーカーがある。そこで現実に戻されそうになり、慌てて振り払いました。盤をはさめば15歳でも同じ棋士で対等なのです。

子供にいい大人が真剣勝負なんて、と思った瞬間に負けてしまう。若いことがハンデなのではなく、それは我々ベテラン棋士にとってこそ、命取りになると痛感しました。

結果、執念だけで逆転勝ちしましたが、これからは同じような戦い方では大差で負けてしまうでしょう。

藤井さんはどれだけ伸びると思うかとよく聞かれますが、半年前は、20代前半でA級(順位戦における棋士の最高クラス)に在籍していればすごいのではと答えていました。今は考えを改め、20歳くらいだと思っています。

羽生さんの『若いころの自分と今の自分が戦えばどちらが勝つか』という記事を見たことがあります。彼曰く、勢いは若いころのほうがあるが、経験値は今のほうが遥かにあるから勝つだろう、と。

つまり引き出しが多いということですが、藤井さんを見ると、私が長年かけて引き出しを増やしてきたのはなんだったのかと思うことがあります。引き出しは多くても、全部もぐらたたきのようにつぶされていくような印象です」

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目覚ましい進化を遂げている藤井六段。このまま勝ち進めば、今秋の第31期竜王戦で羽生竜王に挑む可能性がある。

「羽生さんと藤井さんが公式戦で戦ったのはまだ1回に過ぎません。タイトル戦でどちらが強いか、ぜひ見てみたい。

朝日杯の後の会見で羽生さんは『藤井さんは今後タイトル戦に出て来ると思っているが、私がそこにいるかは分からない』と話していました。

従来ならタイトルホルダーは20代、30代が多く、40代の羽生さんが例外的な存在なんです。今後何年かで羽生――藤井のタイトル戦が実現しないと、もしかするとこのカードは永遠に見られないかもしれない。だからこそ期待が高まります」(松本氏)

 

三浦九段は言う。

「羽生竜王はある意味で今も『全盛期』といえます。七冠独占時はもちろん、47歳になっても衰えない強さや集中力という点も加味しなくてはなりません。

タイトル戦のストレート勝ち連続6期、タイトル保持26年超など、信じられない記録や数字を持っておられる。

一方、藤井さんのデビュー以来29連勝という記録の更新も今後は不可能に近いでしょう。藤井さんが更に成長し、トップに立つ時期が来たとしたら、その時はまた考えられない記録が生まれると思います。

二人の生んだ記録や偉業を後世の人がまた見比べて、どちらが強かったのか考察してくれるはずです。それは非常に興味深いですよね」

その日までに、二人の天才棋士はどんな夢を見させてくれるのだろう。

(文中一部敬称略)

「週刊現代」2018年3月10日号より