藤井聡太六段が「全盛期の羽生七冠」と闘ったら勝つのはどっちか

棋士・専門家が予想した
週刊現代 プロフィール

藤井が圧倒的な点

前提として当時の羽生と現代の藤井では置かれた環境が大きく異なる。前出の松本氏は指摘する。

「朝日杯で藤井さんが指した手は、コンピュータ将棋が導き出した最善手に近いものが多く、その完成度に驚かされました。彼の持つ元来の才能はもちろん、将棋ソフトを使って相当練習しているのでしょう。

羽生さんの世代は将棋ソフトもまだ弱く、コンピュータはデータベースとして過去の棋譜を研究するという活用法でした。しかし、今はソフト自体が強くなっており、研究の方向もより実践的なものに変わりつつあります。

そう考えると、全盛期の羽生さんといえども、研究の進んだ今の棋界で活躍する藤井さんに勝つのは難しいでしょう」

だが、それは同時に今のようなインターネット環境も優秀な将棋ソフトもないなかで羽生があれほど強かった、ということとも再認識できる。

 

「私のような平凡な棋士が歴史に残る二人の棋士を批評するのはおこがましいのですが……」

そう前置きしつつ話すのは三浦弘行九段だ。

「将棋を指すにあたり、研究を重ねて最善手とされる『定跡』を把握しておくことが基本です。この定跡は研究によって進化しているため、羽生さんの若いころと今では、だいぶ異なっています。

当時の羽生さんは今の定跡を知らないのだから、その状態のままでは、やはりハンデが大きいでしょう。しかし、コンピュータなどを使い序盤・終盤の最新の手筋を1年ほど研究していただければ、それは羽生さんが勝つに違いないと思います」

また、コンピュータを使った研究にない強みもあると大崎氏は言う。

「羽生さんは、自分の若いころにはコピー機もFAXもなかったと話していました。棋譜は電話を介してすべて口頭で聞いていた。そうした時代をくぐり抜けてきた人は、今の将棋ソフトを使って研究する時代とはずいぶん差があるかもしれない。

ただし、コンピュータが解答を出してくれるからこそ、時間の節約にはなっても、考える必要がなくなります。

羽生さんの世代はコンピュータがないので、ある局面を2日も3日も頭の中で考える。そうして解答を出していくしかないのですが、今ではコンピュータを使えば一瞬で最善手が分かってしまう。羽生さんが培ってきた考える力こそ彼の強みと言えます」