2020年「前代未聞の教育改革」で教師の仕事はこう変わる

「正解のない問い」をどう「教える」か
石川 一郎 プロフィール

正解のない「問い」を考える

では、どんな学びを展開すればいいのか、具体的にお話しましょう。

例として、首都圏で中学受験の模擬試験の運営をしている首都圏模試センターの「思考コード」を取り上げてみます。「思考コード」は、「思考レベル」と「問題難度」の2つの軸で問題分類する方式です。今までのテストでは、知識の量を問う問題が多かったのですが、この「思考コード」では、思考レベルを以下のように分類しているのが新しい視点です。

A 知識・理解思考…知識を問う問題、知識を理解し運用できているか問う問題
B 論理的思考…応用力を問う問題、情報を分析整理する力や論理的に説明する力を問う問題
C 創造的思考…自分の考えを表現したり、様々な知識や創造力を活用したりする力を問う問題

以下でご紹介する図は、1549年に来日し、初めて日本にキリスト教を伝えたことで有名なフランシスコ=ザビエルに関する「問い」が示されています。

画像提供:首都圏模試センター

Aの知識・理解思考を問う行は、A2の「ザビエルがしたこととして正しい選択肢をすべて選びなさい」という「問い」のように、知識を理解しているかどうかが問われていて、基本的なことを覚えていれば解ける「問い」です。

Bの論理的思考を問う行は、「ザビエルが日本に来た目的は何ですか? 50字以内で書きなさい」という「問い」のように、得た知識を論理的に組み合わせることができるかどうかを問う「問い」です。

 

AとBの「問い」は、「正解のある『問い』」です。大体のテストは、このAとBの「問い」から成り立っており、日ごろの授業もそのテストに向けて行われているのが実情だと思います。

Aの「問い」で、テストに向けて準備してきたかどうかが問われます。Bの「問い」で、内容を正しく理解しているかどうかが問われます。一般的には、Bの「問い」は記述式になっている場合が多く、配点も高めに設定されています。

それではCの「問い」はどんなものでしょうか。C3の「もし、あなたが、ザビエルのように知らない土地に行って、その土地の人々に何かを広めようとする場合、どのようなことをしますか。600字以内で答えなさい。」という「問い」から考えてみます。

この「問い」は「正解のない『問い』」です。C列の「問い」はすべて、「もし、あなたが~」という形式になっていて、自分の考えが問われている「問い」なのです。

そして、ここで考えたいのが、この「問い」は試験で終わりではない「問い」であることです。自分が生きていく中で生涯に向き合っていかざるを得ないような「問い」です。

この「問い」からこそ、「主体的・対話的で深い学び」は生まれます。

未知なる未来に向け、自分の人生を「主体的」に考える。

多種多様な他人の意見と意見を交換する「対話的」な学び。

学びが深まるために欠かせないザビエルだけでなく多くの人の経験を知る「深い」学び。

「主体的・対話的で深い学び」は、このような「正解のない『問い』」からでないと生まれないのです。