ロヒンギャ難民キャンプで、医療支援者が見た「耐え難い現実」

いったい何が起きているのか?
望月 優大 プロフィール

――精神面の不安が逃げ場のない暴力につながっていると……。

具: 私が現地に最初に入ったのは11月で、当時は朝9時から夜12時までひっきりなしにクリニックに患者が押し寄せていました。胃腸薬などをどんどん渡していくような感じです。

それが2018年に入ってクリニックに訪れる人数も減ってきています。キャンプ到着当初の不安感や身体の不調から押し寄せていた人たちがだいぶ減っているのだと思います。

でも、それは医療的ケアのニーズがなくなっているということではなく、フェーズが変わっているのだと思っています。

日々細々と生活していくための物資の次は、今後どうしていくかという不安から生まれる精神面のケアが課題になってくると思っています。身体的な痛みに比べてわかりにくくなり、しっかりとした関係性が構築できなければクリニックにも来てくれません。

――課題が精神面に移っていくにつれ、支援者がケアを提供するにも長期的な関係性の構築が大事になってくると。

具: はい、ロヒンギャ難民の中で私たちの活動をサポートしてくれているボランティアがいるのですが、そのうちの一人は「自分も含めて精神面をやられていない人はいない」という言い方をしていました。

キャンプに来てからの経験もありますが、彼らの多くはキャンプに来るまでの間に目の前で多くの人が殺されるのを見ています。

多くの人がケアを必要としていても、クリニックに来てくれるわけではありません。まずは、「ここでこんなサービスが受けられる」ということを知ってもらうことから始める必要があります。

 

――自殺念慮を持つ人も多いのでしょうか。

具: 「死にたい」と口にする人は多いです。これもロヒンギャの人たちに聞いた話なのですが、教育を受けている人とそうでない人との間でも捉え方が違うそうです。

しっかり教育を受けてきて、英語を話せるような層は、これから自分がどう生き延びていくのかと漠然とした不安を抱くというよりは、これから自分たちに何ができるのかということ具体的に考える。反対に、教育を受けてきていない人たちにとってはお先真っ暗という感覚になっている人が多いそうです。

特に、先ほども言った通り女性は10歳以降学校に行っていない人ばかりですから、男女差が出てきます。

(写真:Arnaud Finistre)