ロヒンギャ難民キャンプで、医療支援者が見た「耐え難い現実」

いったい何が起きているのか?
望月 優大 プロフィール

具: はい、そうです。ロヒンギャ難民の中でも女性はさらに弱い立場にあります。ハラスメントも言葉だけでなく身体的なものにつながることもあります。そういう恐怖心から夜間は特に外に出ていくことが憚られるようです。

また、子どもはトイレに行きたがる回数も多く、家から遠くにある公衆トイレにその都度連れていくわけにもいかないようです。

(写真:Arnaud Finistre)

――女性にとって特に厳しい環境があると。

具: はい。ロヒンギャの17歳の女の子に聞き取りをしたときに言っていたのですが、ミャンマーにいた頃から女性は10歳になると「家の外に出てはいけない」と親から言われていたそうなんです。なので女性は10歳以降教育を受けてきておらず、読み書きもままならない方が多いです。識字率の低さは今後の健康教育にとっても壁になってくると思っています。

――ロヒンギャの保守的な文化も女性の困難に拍車をかけている……。

具: そうした背景の中で難民化した女性たちは、家族、特に男性に頼るしか生きる術がないという状況に置かれていると思います。

 

精神的な不安と暴力

――キャンプでの生活には体感的な不安も強く伴っているのでしょうか。

具: 改めて聞いてみないとわからないことも多いですが、現在のように先の見えない不安感の中で何ヵ月も暮らしていると、精神的に不安定になってくる人は多いように思います。実際、キャンプでの生活が長期化するとともに暴力沙汰が増えてきているという話は聞いたことがあります。

特に夜間です。私たち外部からの支援者は安全管理という名目で17時以降になるとキャンプを出なくてはいけないのですが、その後の時間帯にロヒンギャの難民同士でのいざこざが起こりやすいと聞きます。仲裁に入る役割のバングラデシュ人たちは17時以降もキャンプ内に残っています。

(写真:Arnaud Finistre)

――夜の時間帯に表面化してくるんですね。

具: 日中は配給をもらいに行くなどそれなりに家の外に出ていく場所があったりするんです。でも夜は家にいるしかない。外でのいざこざだけでなく、女性の場合は家庭内での夫からの暴力がすごく多いんです。ミャンマーにいる時からあったものがキャンプに来てさらに増えている。私たちも女性の精神面のケアは重視しています。

ミャンマーにいた頃は、家庭内で夫からの暴力を受けた女性たちは自分の両親のところに逃げていたそうなんですが、キャンプではその両親すらいない、逃げる場所がないという状況に陥ってしまっています。男性は行き場のない怒りを女性にぶつける、そして女性たちはその暴力から逃れる場所を失っています。