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ある日、突然「がん告知」を受けても後悔しないための最新知識

どんなにつらくても、方法はある

相変わらず、がんは不治の病として、ドラマや映画では描かれます。でも実際には、5年生存率は明らかに上がってきました。国も医療も本腰を入れだしたがん対策。「本当の現状」をお伝えします。

2人に1人はがんになる時代

がんを告知された人の多くは、脳裏に「死」という言葉が浮かび、特別な病気になってしまったと、目の前が真っ暗になるといいます。

「実際には、毎年86万人の日本人が新たにがんになっていて、生涯で2人に1人はがんに罹患します。がんは決して特別な病気ではありません」とは、国立がん研究センターがん対策情報センター・センター長の若尾文彦さん。

「超高齢化にともない、がんになる人が増えていて、がんは日本人の死亡原因の第1位です。でも、がんになった人の5年生存率を見ると、現在6割(すべてのがんの平均)を超えており、治るがんも増えてきているというのが現状です。

ところが、平成28年の内閣府の世論調査では、“2人に1人ががんになる”ことや、“5年生存率が5割以上である”と認識している人は、わずか3割程度。一般の認識と現実の治療現場とのギャップはまだまだ大きく、“がんは珍しく、治らない病気”のイメージが強いようです」

出典:がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2013年データに基づく)/国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
出典:がんで死亡する確率~累積死亡リスク(2016年データに基づく)/国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

誰でもがんになる可能性は高いのに、自分には関係がない病気とどこかで思ってしまう。そういう人ほど、がんを患うと「なぜ私が?」とパニックに陥ることが多いといいます。ならば、まずはがんの現状をきちんと知り、備えておくに越したことはありません。

 

いまは「治癒」「共存」が目指せる

中でも、50代の女性は、“幅広くさまざまながんに気をつけたい世代”だと、若尾さんは忠告します。

「男性は50代後半から胃がん、肺がん、大腸がんなどが急激に増加します。女性は子宮頸がんや乳がんが、40代から50代でピークに。さらに50代後半からは、男性と同様に中年以降に多い大腸がんや胃がんなどが、女性でも徐々に増えていく。

つまり50代の女性は、女性特有のがんと、中年以降に多いがんの両方に気をつけなければならない世代なのです」

段落全がん 年齢階級別罹患率 全部位 2013年(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)

がんから命を守るためには、定期的に必要な検診を受け、日ごろからからだの不調や変調に気を配っておくことが大切です。でも、もしがんになっても、やみくもに怖がる必要はありません。なぜならここ10年で、がんを取り巻く環境は大きく様変わりしているからです。

「がんの克服を目的に、2006年に“がん対策基本法”という法律が制定され、日本のがん医療は大きく変わりました。少しずつがん検診を受ける人が増え、早期にがんを見つける人も多くなっています。なかでも、乳がんは早期で見つければ5年生存率はほぼ100%で、治る人も多いのです。

また、質の高いがん医療を提供する“がん診療連携拠点病院”などの指定も、現在は全国に434施設まで増えました。もちろん治療の課題は多く残っていますが、今後も徐々に整備改善されていきますよ」(若尾さん)

現実に、1996年までにがんと診断された方と、がん対策基本法ができた2006年以降にがんと診断された方を比較すると、5年生存率は10%近く伸び、今後さらに伸びていくとの予測も。

出典:全国がん罹患モニタリング集計 2006-2008年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター、2016)、独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書

この生存率が上がっている背景には、がんの薬物療法の進化も大きいと、日医大武蔵小杉病院の腫瘍内科医師、勝俣範之さんは指摘します。

「ひと昔前は、がんに有効とわかっている海外の治療薬も日本でなかなか承認されず、“ドラッグ・ラグ”が問題になっていました。ですが、がん対策基本法の制定後は、急速に進み、新たに40種類以上の新薬が日本で認可され、これが生存率向上に大きく貢献しています。たとえがんが再発しても、使える薬はあるのです」

さらに現在は、がん治療の進化や副作用を軽減する支持療法もすすみ、治療をしながら仕事を続ける人も増加中。少なくとも今のがん治療は、昔見たドラマのような壮絶なものとは違います。がんになっても自分らしい人生を選択できるように、今こそ基礎知識を身につけましょう。