一生貧困の宿命「アラフォー・クライシス」を生んだ犯人は誰だ

「不遇の世代」の悲痛な叫びを聞け
秋山 輝之 プロフィール

企業人事はこの世代をどう見ているのか

この記事を書くにあたり、何人かの大手の企業人事責任者に、アラフォー・クライシスについてどう思うか話を聞いてみた。しかし、おおむね関心は低かった。理由は簡単だ。企業人事にとって、この世代の正社員は少数派だからである。人事が気にしているのはむしろ、社内に正社員の人数が多いバブル入社世代の動向だ。

アラフォー世代は労働人口が最も多いので、企業で仕事をしていないはずはない。団塊世代が老後を迎えて抜け始めた昨今はなおさらだ。しかし、アラフォー世代は下請けまたは非正規雇用が多いので、そもそも企業人事の管理対象から外れているのである。

交差点を歩くサラリーマンたちphoto by iStock

そんなわけで、企業の人事戦略がクライシス世代を生んだと言われている、などと話を振ってみたところで、人事部門の人たちにはその世代が見えていないのだから、課題とは感じられにくい。

最初の節で紹介した某大手メーカー社長の発言も、バブル期に大量入社した50歳前後の社員に比べて、その次を支える世代が手薄いことを課題としてとらえたものだ。下請けや非正規の立場で、企業の仕事を支えている大量のアラフォー世代がいることがまったく認識されず、「社内にいない」ことが課題とトップから見られている。なんとも皮肉な状態だ。

 

このままの人事戦略が続いたらどうなるのか

企業の人事戦略が、このままアラフォー世代に目を向けず、無策なままでいたら何が起こるのだろうか。

まず、少ない退職金を受け取って老後生活に突入するアラフォー世代が、20年後あたりから大量に発生するだろう。まさにクローズアップ現代プラスが指摘した「将来の貧困が宿命づけられた」未来が現実のものとなる。

正社員としてのキャリアが短く、転職をくり返してきたために退職金を積み上げていないアラフォー世代は、60代はおろか、70代になってもフルタイムで働き続けるようになると予想される。なかには体調を壊し、貧困に陥る人たちも出てくるだろう。そうなれば、人数が多い分、失業給付や生活保護など国全体の社会保障コストを押し上げることになる。

その前に起こるもっと大きな問題、いや、すでに起こっている問題は、日本の採用市場の質への影響だ。

日本国内で従業員を募集すると、意外に若者は少なく、非正規雇用で企業を転々としてきた40代の応募者が多く集まる。このため、いまの日本は、若くて意欲的な労働者や専門スキルを磨いた従業員を採用しづらい地域だと、世界から認識され始めている。つまり、労働市場としての魅力が激減しているのである。

企業が人事戦略を行き当たりばったりの短期的視野で考え、自社最適の発想で採用・登用を抑えてきた結果、日本の労働市場全体の価値を下げかねない皮肉な状況が生まれていることを、筆者はここではっきりと指摘しておきたい。