一生貧困の宿命「アラフォー・クライシス」を生んだ犯人は誰だ

「不遇の世代」の悲痛な叫びを聞け
秋山 輝之 プロフィール

「ルールチェンジ」の煽りを受けて

社会のルール、企業のやり方が唐突に変わるとき、その変化を真正面から受けてしまう世代が出てくる。ルールの変更そのものはあらゆる人に影響を与えるものだが、なかでも、ちょうど社会や企業に入ろうとしていて、ルール変更で待ったを食らう人たちへの影響は大きい。

新しいルールのもとで、どうしたらうまくいくのかと戸惑っているうち、ベストではない選択をしてしまうこともある。第二次大戦の終戦による劇的なルール変更には比べるべくもないが、それでも、この20年間の「年功・集団的な考え方から、個別・契約主義的な考え方への転換」という企業の人事戦略の変化は、団塊ジュニア世代を翻弄するに十分なものだった。

 

では、どのようなルールチェンジがあったのか。時系列で思い出してみよう。

一つ目は「高卒・地方採用の中止」だ。

このため、企業の採用枠は1994年から3年間で2分の1に、6年間で5分の1にまで縮小した。年齢別の労働人口が最も多い世代であるにもかかわらずだ。企業に就職するために大学卒業が前提となり、急きょ進学を求められ、生活コストの高い(大学の集中する)都市圏に人口が集中した。女性の4年制大学進学率が20%を超えるようになったのもこの世代からだ。

ホーム上のサラリーマンたちphoto by iStock

二つ目は「高学歴受験競争と就職氷河期の到来」である。

大学を卒業すれば就職できると思われたのも束の間、就職氷河期に突入した。「エントリシート」「リクナビ」、呪文のような「自己PR」が広がり始めたのもこの時期だ。応募(エントリー)の仕方や面接・選考の方法も複雑化した。企業が採用枠の縮小に慌て、採用選考方法を手探りで暗中模索するなか、就職活動は情報戦と化した。

雇用の救い手となったのは、マーケット拡大を目指すサービス業だった。ただし、工場ごとに人事総務がある製造業と、多拠点展開するサービス業では当時、労務管理密度がまるで異なった。拠点ごとのマネジメントレベルのばらつきは大きく、現在で言うところの「ブラック企業」につながる職場に、大卒の人材が流れ込んだのもこの時期からだ。

実は、この時期に入社した世代こそが「ブラック上司」になっているのではないかと筆者は考えている。

非正規雇用の拡大もこのころからだ。「自由」「自分らしさの時代」「フリーター」といった言葉が飛び交い、当初は「ロックな、自立した生き方」などと紹介されたりもした。あの時代は何だったのか。いまは総理大臣が「非正規雇用という言葉をこの世の中から撲滅する」とまで言っているではないか。

既得権ゼロで、成果ばかり求められる不利

正社員で製造業や大手企業に入社した人たちも、大きなルールチェンジの影響を受けている。

2000年前後を境に、企業の人事制度は年功序列中心から成果・役割中心の「仕事主義賃金」に変化した。しかし、何歳のときに仕事主義の制度が始まったかによって、その影響はまったく異なってくる。年功制度を経て十分に高まった賃金を出発点にした人と、就職氷河期の初任給を出発点にした人とでは、同じ制度を適用しても、報酬額は大きく異なる

最初から成果主義・仕事主義が適用されている世代は、上のポストがつかえている限り、役職に就けず報酬も上がらない。既得権がないからだ。抜け道として、出世しないまま残業代で稼ぐ方法もあったが、それも最近のルールチェンジで難しくなった。

教育研修のルールチェンジも大きい。自分の能力は自分で磨くことが是とされ、生きていくには、自己投資で資格を取ることが奨励されるようになった。しかし、中途半端なスキルは今後人工知能(AI)にとって代わられるだろう。ほかに、企業年金制度なども大きく変化したが、老後の準備をどう行うのがオーソドックスなのかがわからず、立ち尽くして無策でいる人も多い。