「福島は危険だ」というフェイクが、7年経っても県民を傷つけている

「デマ」を信じている国民がまだ半数
林 智裕 プロフィール

「福島県民への差別」を認めていいはずがない

他に、正しい情報が伝わっていないことによる偏見や差別、それによるストレスやスティグマ(負の烙印)も深刻な問題です。2017年8月の朝日新聞では、福島県の高校生による下記のような投書が掲載されました。

〈福島の人々は放射能に苦しめられてきた。自殺した人、県外の転校先でいじめられた子ども。苦しい思いをするのは私たちだけでいい。(中略)差別されようと、それを乗り越えて成長するための『フクシマ』なのだ〉http://digital.asahi.com/articles/DA3S13075626.html?_requesturl=articles%2FDA3S13075626.html&rm=150

震災を経験した子どもたちが、「福島に生まれた自分は、差別されて当然だ」と諦めてしまっていることがわかります。

この投書にも書かれているように、震災後に福島から避難した子供や、進学などで県外に出た子どもが、避難先でいじめられたり差別される事件も相次ぎました。

 

こうした差別は、たとえ表面上は風化し沈静化したように見えても、実際には単に大勢の人が無関心だったり、他人事だと考えているために、存在しないかのように見えることもあります。

しかし、「放射線の影響が次世代にも及ぶ」という誤った思い込みを野放しにすれば、例えば「家族や親戚が福島出身者と結婚する」といった局面において、思い込みや誤解から、トラブルへ発展するリスクもあるでしょう。

現に広島と長崎では戦後、被爆者に対する結婚差別が起こりました。こうした過ちを繰り返してしまうのならば、戦後「唯一の被爆国」をアイデンティティの一つのように語ってきたこの国は、70年以上もの間に、一体何を学んできたというのでしょうか。

不適切な言説やデマが飛び交うことで、被害者に誤った刷り込み、スティグマを背負わせるリスクが高まります。将来にわたる深刻な差別にもつながりかねません。「何も起きなかったら、後から笑えばいいじゃないか」とは、決して言えないのです。

「デマ」の傷は重く深い

福島県では、今も190万人近くの県民が日常を暮らしています。2017年には、日本酒の新酒観評会での金賞受賞数は福島県が5年連続で日本一となり、名産品の桃は、東南アジア向けに震災前を越える勢いで輸出を拡大させています。

お米に関しても、震災の年にデビューした福島県オリジナル品種「天のつぶ」が、その高い品質と大粒で硬めの特徴から、輸出先の中東などで「アルティメット・スシ・ライス(究極の寿司米)」として人気を博しています。

最近EUと締結された経済連携協定(EPA)交渉のさなかにも、EU側のユンケル委員長からわざわざ福島の農作物への言及があり、その安全性を賞賛した上で、 EUでも福島県産米に対する輸入規制を撤廃したことが、福島県内では大きく報道されました。全国のメディアでは、EPA交渉は「ワインやチーズが安くなる」と見出しを立てた報道が目立ちましたが、読者の皆さんはこのことをご存知だったでしょうか。