「平昌五輪」運営の教訓を、東京五輪にどう生かすか

多少の不便もあったけれど
竹田 聡一郎 プロフィール

アスリートファーストを建前にするな

交通に関しては概ね満足している。江陵からパークまでのシャトルバスは助かったが、徒歩でも20分というので歩いたこともある。ただ、その道のりは割と急勾配の丘をアップダウンする「登山」と呼びたいくらいのものだった。子供やお年寄りには厳しかったかもしれない。

江陵駅からオリンピク・パークまでの遊歩道。市内西側が一望できるが……(著者撮影)

また、昨年から国内の新聞などが「ソウルから江陵までKTXは1時間54分で走る」と書き立てていた割には、ソウルまでの上り便は僕が乗った便は、すべて器用に5分から10分の遅延があった。そして深夜にソウルに戻ってくる観戦客のために市内を走る臨時バスの運行をしていたようだが、これもほとんどの外国人には伝わっていなかったようで、ソウル駅にはタクシー待ちの長い列ができた。これも事前に広く周知してほしかった。

KTX京江線の江陵駅(著者撮影)

宿泊についても、部屋が足りないとの報道があった割には、宿泊施設をめぐるトラブルは少なかったようだ。

 

大部分の人はウィークリーマンションや民泊を利用したようだが、江陵にはモーテルもたくさんあるので、そちらを利用した観客も多い。ただ、なかには値段を釣り上げたり、とんでもない料金を提示するモーテルもあった。僕も2度ほど江陵駅付近のモーテルを利用したが、1泊10万W(約1万円)と普段の倍の料金をふっかけられた。もっとも立ち去る素ぶりをしただけで、あっという間に5万Wに下がったが。

ソウル駅側のオンドル部屋5万w。一時は20万wとの料金設定も(著者撮影)

そして肝心な盛り上がりだが、さんざん開幕前に「国民の半数が関心なし」という類の報道が出ていたが、始まってメダルラッシュが続くとほとんどの国民が「テーハミング」の大合唱だ。

年末には閑古鳥が鳴いていた明洞のオフィシャルグッズショップも、「大会中盤から賑わってきた」とスタッフが言うように後半は大盛況。品薄なグッズもあった。

閉幕に向かう2月20日以降はワゴンセールのような状態でBuy1Get1、すなわち「1個買うともう1個おまけ」と投げ売りも始まり、これも好評だったようだ。

大会が始まると明洞のオフィシャルショップは盛況。大会終盤の2月20日以降は投げ売り状態

最後になるが、個人的には雪上の競技が遅い時間に行われていたことが、一番の問題だと感じた。

運営サイドは「悪天候を避けるため」という曖昧なエクスキューズをしていたようだが、テレビ放送の時間帯が関係しているのはあきらかだろう。ヨーロッパで人気があるノルディック競技は、彼の地との時差を勘案して、すべて夜遅い時間に行われていた。

 

昨今、五輪は商業的なものという事実は中学生だって気づいている。だったらいっそ「儲けたいのでテレビ優先で運営します。ご了承ください」と開き直るというか、素直に伝えれば、摩擦は少ないのではないか。アスリートファーストという言葉を建前にしてはならない。

こまごまとイチャモンに近いようなことばかり書いたが、それでも総括すると大会全体は及第点だったと思う。特に年末の時点でオリンピックパークの工事の状況を見ると「これ、開催できるのかな」と不安になったが、正月返上で仕上げたのだろう。現場の努力には頭が下がる。

冒頭の写真と同じ場所の年末の状態。これで間に合うのかと不安になった(著者撮影)

なにかと隣国にいちゃもんをつけたがる人々は、些細なことをとりあげて「だから韓国は~」と言い出すかもしれないが、エンブレムの選考で大混乱し、新国立競技場の建設費問題で揺れていて、夏期五輪開幕まであと2年だというのに未だ色々なものが宙ぶらりんになっている国だってある。

某都知事は平昌の開会式などを視察してプロジェクション・マッピングに感動したらしいが、そこじゃねえだろ、と思ったのは僕だけだろうか。

他人事ではないのだ。インフラや宿泊や会場設営、チケット販売のノウハウ、ホスピタリティ。今回の平昌で起きたすべての事柄が参考と教訓になるはずだ。2年後の東京2020へ。さらに8年後には札幌に冬季を誘致する動きもある。我々は正しくスポーツの素晴らしさを世界に発信できるだろうか。次は問われる番だ。

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