松本人志「ネカフェ難民は、ちゃんと働いて」発言に足りなかったもの

都内に4000人もいるのは理由がある
大西 連 プロフィール

住む家を失った理由

多くの方がもつ疑問として、そもそも、なんでネットカフェ生活になったのだろうか、というものがあると思います。

もちろん、人によって一人ひとり事情は異なりますが、今回の調査では、「住居喪失の理由」も明らかになりました。

住居喪失の理由
拡大画像表示

「仕事を辞めて家賃等を払えなくなった(なりそう)ため」が32.9%、「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た(出ることになりそうな)ため」が21.0%と、仕事を辞めたことが住まいを失った原因になった人が約半数にのぼることがわかりました(同報告書33ページ)。

また、他の理由としては、「家族との関係が悪く、住居を出た(出ることになりそうな)ため」が13.3%であったり、「友人等と同居していたが居づらくなりその家・部屋を出た(出たい)ため」が4.2%となど、家族や友人などと同居していたがそれを続けることができなくなった人も一定数いました。

これらからわかることは、仕事の影響、減収や失業などが大きな原因になっていること、また、家族や友人など親しい人との関係の悪化や援助を求められない状況であることです。

もちろん、すべての人に当てはまるわけではないでしょうが、経済的な問題だけではなく、身近な人に支援を求めにくい人も多いことが推測されます。

また、他にも、調査項目の最終学歴の部分を見ていくと、中卒が10.2%、高校中退が19.6%、高卒が51.2%と、全体の81%が高卒以下であり、大卒以上の学歴の人が1.1%であることなども明らかになりました(同報告書24ページ)。

総じて言えることは、学歴が高くはなく、不安定な仕事を転々とし、家族や友人等の人間関係に難しさを抱えてネットカフェ生活にいたっている、ともいえるのではないでしょうか。

 

やはり、これらの今回の東京都の調査結果をみていくと、「ワイドナショー」の番組内ででたような「(ネットカフェ難民に)ちゃんと働いてほしいから」というような発想は、これらの実態をみていくと、必ずしもあたらないのではないか、とも思います。

もちろん、限られた時間のなかで公表されたデータのすべてをひもとくことは難しいでしょう。

しかし、取材をはじめ、番組作りのなかで、適切な情報を提示し、その情報のもとに議論をしていくプロセスはとても重要だと思います。

正しい情報をもとに議論を

ここまで、松本人志さんの発言を受けて、「ネットカフェ難民」の実態について東京都の調査報告書をもとに明らかにしてきましたが、必要なのは、誤った情報による議論ではないと思います。

同報告書の「悩み事等を相談できる人」という質問項目では、「相談できる人はいない」が41.3%と最も多かったことは深刻です(同報告書62ページ)。

悩み事等を相談できる人
拡大画像表示

当然ですが、「ネットカフェ難民にちゃんと働いてほしい」というのが社会のなかでの大きな声であったら、また、テレビをつけた時に流れていたら、周囲の人になかなか相談しにくくなるだろうなと思います。

残念ながら、一定程度以上の収入がある人への支援というのは日本社会ではまだまだ少ないです。

生活保護基準以下の収入や資産であれば生活保護が利用できますが、それ以上の収入等がある人への支援についてもきちんと考えていく必要があるでしょう。

事実、一定の収入があってもネットカフェなどでの生活から抜けることができない人がいるのが事実である以上、社会として支えを作っていくことが求められます。

低所得者向けの家賃補助制度や、低所得者向けの相談支援事業については少しずつですが、制度が始まっています。

松本人志さんの「ワイドナショー」での発言をきっかけにネットカフェ難民の実態について書かせていただきました。多くの人の関心が、彼ら彼女らの生活をどう支えていくのか、という方向性に向かっていくことを願っています。