松本人志「ネカフェ難民は、ちゃんと働いて」発言に足りなかったもの

都内に4000人もいるのは理由がある
大西 連 プロフィール

実際に、その日以降、僕や僕が所属する〈もやい〉(生活困窮者の支援をしている認定NPO法人)にも取材依頼が多く寄せられていますし、いくつかのメディアには取材協力やインタビュー撮りなど協力しています。

この東京都の調査の報告書は80ページ近くあるボリュームのあるものなのですが、残念ながら多くのメディアでは、それを丁寧に読み込んだり、専門家や現場で支援をしている実務家に取材したりはしていません。

飛び込みでネットカフェに取材に行って、協力してくれる人がいたら当事者に直接アポをとって取材をするところが多いのも事実です(専門家や支援団体の多くは当事者の紹介をあまり積極的におこなわないこともあり、番組や記事にする際には当事者が自らを語ることが核になりますから)。

当事者のインタビューというのは、それはそれで事実であり、その人がネットカフェ難民であれば、ネットカフェ難民の一つの実態ではあるのですが、一方で、当然ながらその人の状況が多くのネットカフェ難民の人に共通しているとは限りません。

また、ある種、飛び込みの取材の場合、そういった取材手法でも協力してくれる状況の当事者の人である、というバイアスもかかるでしょう。当然、メディア側が編集をおこなうわけですから、何らかの意図をもったインタビューになる可能性もあります。

そういった意味では、今回の東京都の調査は、200以上の24時間営業のネットカフェ等の店舗と、946人の利用者へのアンケートをもとにしているので、ネットカフェ難民等の実態を明らかにする重要なデータです。

ネットカフェ難民はちゃんと働いていないのか、どんな人たちなのか、見ていきましょう。

 

派遣、契約、アルバイト・パートが約8割

東京都の調査では、ネットカフェ難民の人のなかで、正社員の人は約4.5%、派遣で働いている人が34.7%、契約社員が4.4%、パート・アルバイトの人が35.5%、自営業者が5.2%となっている。仕事をしていない人(失業中・休職中)が13.5%となっています(同報告書42ページ)。

住居喪失者の就業状況と労働形態
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ここから、ネットカフェ難民の多く(9割近く)が働いていることがわかります。

また、現在フルタイムで働いている人は44.1%に及び、派遣労働者に関しては88.9%、契約社員に関しては81.3%がフルタイムで働いています(同報告書44ページ)。

フルタイム勤務の経験
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「ちゃんと働いている」という言葉の定義をどう考えるかは難しいのですが、ネットカフェ難民の大半が働いていて(残念ながら非正規雇用などの不安定な働き方ではあるものの)、しかもフルタイムの人も少なくはないということから、ネットカフェ難民が「ちゃんと働いていない」とは言えないのではないか、と思います。