チベット探索中、中国人官僚の高級車に乗せられた結果…

中国一の「危険地帯」かもしれない
青山 潤三 プロフィール

黒塗りの高級車にヒッチハイク

上海から中国ーネパール国境までを結ぶ国道318号線は、中国の主要道路のひとつで、成都や重慶から、ラサをはじめチベット方面に向かう路線バスも頻繁に走っています(外国人のバックパッカーたちにとっては、バスや包車に乗るだけで大変です)。

この国道318号線は、東半分(上海~重慶・成都)はおおむね長江沿い、西半分がチベット高原を走っていますが、おおむね北緯30度を通っています。北緯30度は、日本でいうと屋久島周辺です。屋久島は1960年代半ばから50年以上通い続けている、筆者にとっての日本でのメインフィールド。そして、同緯度の生物相を調べることは筆者のライフワークの一環でもあります。

ということで、今から8年前、雅江の町から長江源流の大支流の一つ「雅砦江」に沿って、「屋久島の海岸に相当する北緯30度13分地点」を目指したことがあります。

ここまで分け入ると、路線バスがほとんどなくなるので、ヒッチハイクに頼らざるを得ません。道中で見た光景には、かなり驚きました。チベット高原を東西に横切る鉄道の建設が始まっていたからです(僅か25㎞の間に、大規模な鉄道や高速道路の建設が4本も行われていた)。その後、2016年3月に開催された全人代で、これらの鉄道の建設が大々的に発表されました。

建設途中の高速道路

このときは、奇妙な体験をしました。なんと黒塗りの高級車が、ヒッチハイクに応じてくれたのです。

一目で政府の高級官僚とわかるスーツ姿の役人が、お供を連れて乗っています。おそらく鉄道建設現場の視察なのでしょう。見た目こそ威圧的ですが、いたって親切で、はじめのうちは一番偉い役人であろう男性と、世間話に興じていました。

すると、突然その役人がこう訊ねてきたのです。

「ところで、君はアメリカは好きかね?」

筆者は笑顔で「もちろん好きですよ!」と答えました。すると、高級官僚氏の表情が微妙に曇ったかと思うと、押し黙ってしまいました。

しばらくして、再び彼が口を開くと、

「君はアメリカが好きなのか?」

と同じ質問をしてきます。

「ええ、好きです……」

明らかに不機嫌そうな表情をしています。ため息をつくと、再び彼はゆっくりこう言いました。

「もう一度聞く。本当にアメリカが好きか?」

ここまでくると、さすがに鈍感な筆者も不穏な空気に気づきます。しかし、今さらとってつけたように「嫌いだ」と言うのも(日本人の感覚かもしれませんが)ヘンです。

そこで筆者は、「中国も好きだし、アメリカも好きですよ」と答えました。お付きの人たちが凍り付いています。

そのまま車から放り出されるかと思ったのですが、部下たちが話題を変えてくれて、何とか目的地まで辿り着くことができました。しかしその後の車内は一切無言で、生きた心地がしませんでした。

この質問が一体何を意味していたのか、筆者にははっきりとしたことは言えません。ただ、いまだにこれが、中国で体験した中で一番恐ろしかった出来事です。