中国がまもなく「世界最強のIT国家」になる歴史的必然性

プライバシーも独禁法もない国だから
野口 悠紀雄 プロフィール

EUは個人データの保護を強化

歴史的に、中国には拡大主義的な思想はなかった。しかし、現代中国は、それとは違う動きも示している。

実際、習近平政権は、「一帯一路」政策を推し進めようとしている。

また、中国はすでにフィンテックで東南アジアに進出している。東南アジアには西欧的な個人主義の伝統はないから、中国的ITが急速に拡がる可能性がある。

こうした中国の膨張傾向に対して、世界は、危機意識を持ち始めている。

データを保護する法制の整備や運用を強化する動きが、世界的な流れとなっている。

ヨーロッパでは、プライバシーと個人データの保護を、欧州連合(EU)基本権憲章で保障する基本的人権として位置付けてきた。

GDPR(一般データ保護規則)は、EUにおける新しい個人情報保護の枠組みであり、個人データの処理と移転に関するルールを定める。1995年から適用された「EUデータ保護指令」に代わり、2016年4月に制定された。2018年5月に施行される。

個人の権利として、不要なデータの消去を要求する権利などとともに、プロファイリングに異議を唱える権利を定めている。また、欧州の消費者や従業員などの個人データを保有したり域外に持ち出そうとする企業に、保護体制の整備を求める。

メールアドレスやクレジットカードカード番号情報といった個人データを域外による第三者が見られるようにすることを原則禁止する。

当面の対象は、グーグル、フェイスブックなどのアメリカIT企業なのだろうが、中国IT企業も意識されていると思われる。

 

日本はどう対応したらよいか?

日本は、以上で述べた中国の状況に対して、危機意識を持っているだろうか?

日本の電子マネーは、アリペイなどに比べてはるかに遅れている。だから、アリペイは、日本にも進出する可能性がある。

アリペイのシステムを取り入れる(日本の銀行に預金して使えるようにする)こととすれば、日本の利用者の利便は増すだろう。

だが、それは日本の決済システムがアリババに握られることを意味する。それだけではなく、顔認証で決済が行われるようになれば、日本人一人ひとりの顔が把握されることになる。

しかし、それを危惧してアリペイの日本上陸を拒否すれば、日本はフィンテック鎖国をすることになる。

日本でも2017年5月に個人情報を扱うルールが本的に見直した改正個人情報保護法が全面施行された。ここでは、個人情報の定義を明確にしたほか、個人を特定できないようデータを加工すれば、本人の同意なく第三者に提供できる仕組みを導入した。

しかし、こうしたことだけで、以上で述べた問題に対処できるかどうか、大いに疑問だ。