「歌って踊る」小学校の英語の授業

近年ではオランダでも英語スタートの低年齢化傾向があり、全体の34%の小学校が英語義務化前の6年生以前から英語の授業をスタートしているという。そして現在、政府のバックアップのもと、幼稚園的なポジションの初等教育1年生(4~5歳児クラス)から英語教育を義務化させようという動きもある。

筆者の娘が通う小学校では、すでに初等教育1年生から英語をスタートしている。けれど内容は非常にカジュアルで、「勉強」のイメージからは遠いものだ。

この小学校が導入しているメソッドは、「groove.me」というポップソングを題材に英語を学ぶという教授法だ。そのため、娘が使用している5年生/6年生共用の教科書の表紙にテイラー・スウィフトが採用されていたという訳だ。

ここに、このメソッドを取り入れたクラスが、どのような授業を受けているのか垣間見られる動画がある。

オランダの子どもたちでも一度は耳にしたことがあるような英語の曲を流すと同時に、歌詞をモニターに映しクラスみんなで合唱する。この時、気分が乗った子供たちが踊りだすことがあるが、それは全く構わない。この動画の中でも子供たちが「みんなで歌うと楽しくて、新しい単語でも覚えられる」と語っている。

そしてそれ以外にも、その歌詞で使われていた単語や言い回しを活用し、簡単な英文を学んだりもする。

このメソッドは実際に使用している学校の評価も高く、オランダ国内で2100校以上の学校に採用されているのだとか(オランダ国内の小学校は約7000校と言われている)。

-AD-

筆者が、最上級生である8年生の教師に確認したところ、8年生になっても基本的にはこのスタイルのままだという。ただし難易度は上がり、覚えるべき単語の量も増える。その代り文法的な要素はほとんど修めず、主に中等教育になってから学ぶことになるという。小学校のうちは、理論よりまず実践を徹底しているのだ。

ただしこれはあくまでもこの小学校が導入しているメソッドで、全ての小学校がこの方法を採択している訳ではない。

オランダ人が語る「私たちの英語力の秘密」

ただやはり、オランダ人が英語を学ぶのは、我々日本人よりも有利だという側面ももちろんある。オランダ語が英語と同じ「ゲルマン語派」系に属している親戚のような言語だというのは大きなアドバンテージだ。

そして筆者がオランダ人に英語力の秘密を訊ねると、必ず「英語の映画やテレビを、吹き替えではなく字幕で観るから」という答えが返ってくる。確かに北海を挟んだすぐ隣にイギリスがあることもあり、オランダには英語のコンテンツが身近にある。英語に限らず、外国語映画は基本的に字幕で観るスタイルだ。子供向け映画の場合、字幕版と吹き替え版の選択ができるように配慮されている。

けれど、映画を字幕で観るだけなら日本人も同じではないか? 

オランダ人はゲルマン語派の優位性と、英語コンテンツに親しむだけで「世界一の英語力」を確立したのだろうか。小学校での授業は「世界一の英語力」に寄与していないのか? 

前述の「ゲルマン語派」を更に細分化した「西ゲルマン語群」に、英語とオランダ語は共に属している。

同様に「西ゲルマン語群」に属する言語を主な公用語としている国ルクセンブルク、ドイツ、オーストリアがあるが、英語能力試験「EF EPI」の2017年度の結果はそれぞれ7位、9位、10位である

3ヵ国とも、まだ上位5位以内に入ったことはない。もちろん10位内に入っているだけでも十分英語力は高いのだが、オランダの英語力はここでも群を抜いている。

やはりこれは、小学校をはじめとした英語教育の賜物なのではないだろうか。