鬼龍院翔が明かす、いま新人アーティストが売れるために必要なもの

「CDが売れない」時代を考える
柴 那典 プロフィール

自由に使ってもらえるように権利を放棄

――アルバムを聴かせていただいて、いちばん面白く印象的だったのが『誕生日でも結婚式でも使える歌』だったんです。普通にいい曲だと思うんですけれど、そういう曲に「使える」っていう皮肉を込めて形にしているのがゴールデンボンバーらしいなと思いました。

鬼龍院 結婚式の歌や誕生日の歌って、リア充感があるじゃないですか。素晴らしく明るいイメージがある。でも、僕らはこれまでネガティブなことばっかり歌ってきたし、歌声も暗いんで、そういう曲はなかなか無かったんです。

でも、ファンの方から「そういうのが欲しい」という声も沢山いただいていて。でも、どこかがひねくれてないとやっぱり恥ずかしいんですよね。

だから《とにかくおめでとう》とか《あの日あの時あれがなかったら こうはなってないよね》みたいな、どうとでもとれる歌詞で笑いにしたという。で、この曲、権利を放棄することにしたんですよ。

 

――通常、結婚式や披露宴のBGMとして音楽を使う時には著作権の処理が必要になりますね。

鬼龍院 前にも、美容院で曲をかけていたら著作権使用の徴収が来たという話を聞いて。ミュージシャンからしたら、美容院でかけてくれるのは宣伝にもなるしありがたいじゃないですか。そこで曲が流せなくなるのは音楽がヒットする芽を摘んでしまっているように思うし。

とにかくこの曲が使いづらいと思われるのは嫌だし、フリーに使ってもらいたいので、この曲は使用料を徴収しないことにしました。この曲だけは著作権を自社で管理して、決して徴収にはいきません。なので自由に使ってください、と。

そうやって太っ腹にするのをできる事務所でよかったなと思います。どこかでサービス精神があるアーティストの方が応援しやすいと思うんで。

『女々しくて』はなぜ国民的な歌になったのか

――鬼龍院さんには「ヒットとは何か」ということについても訊ければと思います。ゴールデンボンバーの場合は『女々しくて』が最もヒットした曲だと思うんですが、どういう実感がありましたか?

鬼龍院 ヒット曲って、普通に生活していて突然聴こえてくるようなものですよね。僕の顔も名前も知らないけど、曲は知ってるという人に出会う。

僕も居酒屋さんで店員さんとかに「もしかしてあの……」って言われると「『女々しくて』を歌ってる人です」って自分から言いますから(笑)。曲の方が有名であるというのがヒット曲だと思います。

――『女々しくて』の時は、狙いがあったんでしょうか。それとも現象が先に生まれた感じだったんでしょうか。

鬼龍院 事務所が狙ってヒットを生もうとしたんですよ。

もともと僕は90年代のJ-POPがすごい好きで、90年代に売れていたような曲ばかり作っていたんですけど、ある日それを聞いた事務所の人が会議で「これから『女々しくて』を国民的なヒット曲にしたいから、そういう風に動いていく」と言って。

その時僕は「何言ってんだろう、この人は」って思ったんですよ。「そんなことできるはずないだろ」って。でも、それを計画的にやったんです。

テレビ局にパイプのある偉い人が事務所に入ってきて、テレビで『女々しくて』を披露する機会が増えて。そうこうしてたら、結局紅白にも出れて。目論んでいた通り国民的な歌になったんですよね。

――かなり確信的だったんですね。