第三次世界大戦に本気で備える「プレッパー」たちを知っていますか

米国だけで数百万人います
真鍋 厚 プロフィール

 「トランプ支持者」とは限らない

彼らの活動をファナティックなものとみなすのは簡単だ。事実、「影の世界政府」による支配のような陰謀論の類を信じて疑わないような連中も大勢いる。いかにもステレオタイプな発想ではあるが、「頭の悪そうな右翼」が第三次世界大戦の勃発に備えて、大量の自動小銃の弾丸と缶詰を買い求めているイメージは、あながち的外れともいえないわけだ。

ただし、米国ではトランプ政権成立以後、プレッパーの動向にも変化が生じている。これまでプレッパー向けの商品やサービスの主な購買層だった共和党的な保守派の人々に代わって、民主党的な「リベラルプレッパー」の人々が存在感を増して来ているという(*2)。

世界の不安定化に油を注ぐトランプ政権の暴走に業を煮やし、建国精神に盛り込まれた抵抗権・革命権に原点回帰するかのように、自分たちのコミュニティの防衛という直接的な関心に傾倒したというのが真相だろう。

話を元に戻すと、(とりあえず個々の政治主張などを横に置いて本質だけを見れば、)「コミュニティの究極的な機能だけを残した集団」といえるのではないだろうか。つまり彼ら・彼女らは、自然の猛威に立ち向かうことはもちろんだが、国家と市場からの直接的なダメージから、コミュニティを護持することを第一義とする。

人生設計の中心にサバイバリズム(生存主義)があるというわけだ。

 

そこで一つ注意しなければならないのは、社会学者のジグムント・バウマンも指摘している通り、コミュニティのメンバーであることの「対価は自由という通貨で支払われる」(*2)という事実だ。

それは、精神的な安定をもたらしてくれる恋人や親友との関係が、時として「わずらわしいもの」として立ち現れるといった日常的な経験則からも容易に想像できるだろう。

孤独担当大臣より前に設立された英国の「孤独委員会」の2017年報告は、「孤独は1日たばこを15本吸うと同じくらい、健康に害を与える」と警鐘を鳴らしている(*3)。今後、このようなスタンスに基づく予防策が展開されるだろう。

残念なことに日本では、「健康寿命の延伸」という介護・医療費の抑制を目的とする行政的要請から、地域ごとの「支え合い」を求めるような後ろ向きの姿勢が強い。それは昨今の自治会・町内会でも同じことが言える。

多くの地域で活動が低調になっているにも関わらず、「集金」や「労働力の駆り出し」といったメンバーへの負担を強いる仕組みはそのままで、住民のニーズとかけ離れた時代遅れの慣習に固執している。

バウマンの言葉を借りれば、「自由という通貨」に見合う魅力や価値を作り出すことができなければ、どのような活動もただの「やらされ仕事」にしかならないという好例だ。このことについては別の回で改めて論じたい。

確かに、冒頭に挙げた英国の危機感は的を射たものである。

社会的孤立の拡大によりコミュニティの存続に対する関心が弱まってしまえば、次世代を視野に入れた中長期的な経済・社会活動への動機付けは枯渇し、最終的には「国家の没落」というフェーズに突入することは火を見るより明らかだ。