ついに早稲田・慶応も無試験で「はい、合格」の時代が来る

それでいいのか大学入試
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すでに44%は「無試験」組

ライバルであるもう一方の私学の雄・早大でも同様の施策を取っていて、単なる学力だけではなく、学生の「質」を重視した募集にシフトしていくのが狙いだという。

「2010年代に入ってから、早慶の『関東ローカル化』が進んでいると囁かれたことがありました。経済的な理由から、地方の優秀な生徒が首都圏の大学を受験せず、地元の国公立大学に進学する動きが強まったのです。

この傾向を憂慮した慶大はAO入試のひとつである『FIT入試』の中に地方出身者の合格枠を設けました」(大学経営コンサルタントの岩田雅明氏)

早慶ではAOや推薦入試の募集枠は2~3割とまだ少数にとどまっているが、大学全体で見ればAO・推薦を利用する受験生は圧倒的に多い。

 

'17年度の文部科学省「国公私立大学入学者選抜実施状況」を参照すると、大学入学者全体の実に44.3%がAO・推薦で大学に入学している。つまり、現在でも2人に1人は従来の試験を受けずに合格しているのだ。

私立中学から受験勉強に明け暮れ、いざ憧れの大学に入ってみたら、クラスメイトは付属校上がりとAО入試の学生、そして留学生だけだった――。

そのような現実に直面したなら、今までかけてきた努力はムダだった、と絶望するかもしれない。必然的に難関大学としての価値はみるみる失われていく。

一方、人口減少の真っただ中、大学は数少ない優秀と目される学生を青田買いするために、AO・推薦入試枠をどんどん拡大し続けることになる。

それが大学のブランドを下げ、やがて「無試験」でも生徒が集まらないという究極の負のスパイラルに陥る可能性が高い。

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それでは、これから大学生になる子供たちにはどのような未来が待ち受けているのだろうか。

まず挙げられるのが、学生減による授業料の高騰だ。すでに国立大学の学費は年々上がっていて、'90年には年間33万9600円だったのが、'05年からは53万5800円と約6割も跳ね上がった。

さらに、'15年の試算ではあるが、文部科学省は'31年度から国立大の学費は約93万円になり、私大の平均約86万円を上回るとして物議を醸した。だが2018年問題がより如実に現れるようになれば、このような試算もあながち間違いではない。

自立運営が求められる私大であればなおさらだ。慶大は約30年前まで、OBによる多額の寄付金が経営を支え、授業料はそれほど高くなかった。ところがその寄付金も年々減少、学費は他大同等の水準まで上がっている。

多くの付属校を抱え、マンモス校と化しつつある早大も資金の工面に四苦八苦する姿がうかがえる。

同大は今年1月、これから4~5年で1億ドル(約113億円)規模での金融投資を行う計画を表明した。海外の未公開株などでの運用がメインだというが、当然そこにはリスクがともなう。

カネさえ払ってくれれば無試験で「はい、合格」――。大学の拝金主義的な性格は今後強まっていくだろう。

だが、高い学費を払って大学に入り、何事もなく卒業できればまだいいほうだ。在学中に大学が突然倒産する、そんな最悪のシナリオも起こりうるのがこれからの人口減少社会なのだ。

「大学側も経営難だからといって、そう簡単に閉校することもできません。少なくとも在学する学生が卒業する4年間はしっかりと授業を提供しなければなりませんが、今後そのような余裕もない大学が出てきてしまうようであれば由々しき事態です」(前出・亀井氏)

これまで当たり前のように社会に存在していた学歴ヒエラルキーや教育ビジネスは、ついに始まった18歳人口の減少をきっかけに崩壊していく。子供や孫の未来を本気で考えれば、他人事ではいられない大問題なのだ。

「週刊現代」2018年3月3日号より