# オリンピック # フィギュアスケート

羽生&宇野メダル獲得で日本男子フィギュア界がやっと日の目を見た

彼らの快挙が、世界を変える
青嶋 ひろの プロフィール

「戦い合う!って空気が、一番好き」

先輩たちから受け継がれてきた日本男子フィギュアスケートの歴史は、彼らの快挙をひとつの達成として、またこの先へとつながって行く。髙橋大輔が人気スケーターとなり、羽生結弦が頭角を現してきたころ、世間が彼らを見る目も変わっていったという。

「最近は男の子がフィギュアスケートしてるっていうと、学校でも『かっこいい!』って言われるらしいですよ」

そんな兆候が見えはじめてから、数年。今回の歴史的なワンツーフィニッシュを受け、もう男子フィギュアスケートはマイナースポーツのマイナー種目などではなくなった。日本中の小さな男の子たちが、羽生や宇野の演技に夢中になって、フィギュアスケートを習いたがる時代に、きっとなっていくのだろう。

彼らの快挙は、のちの時代につながるだけでもない。

20歳の宇野昌磨も、23歳の羽生結弦も、まだまだこれからの選手。この種目のリーダーと呼べる地位に立った二人は、現在進化の真っただ中にあり、ここからどう展開していくかまったくわからないフィギュアスケート男子を、作り上げて行く立場にも立ったのだ。

平昌五輪後の注目は、ケガの多発や芸術性の軽視など、問題をたくさん抱えた4回転時代が、どうなっていくか。五輪シーズン後は大きなルール変更が予定され、4回転の基礎点は下がり、他のエレメンツや芸術性の採点比重が上がることになるという。

photo by gettyimages

しかしルールが変わったとしても、時代の流れを作って行くのはやはり、選手たちの意思だ。ジャンプが大好きな選手が時代を引っ張り、やはり高難度の4回転は必要なままなのか。人々を魅了するアーティストが崇拝の対象になり、誰もがこぞって芸術性を磨くようになるのか。それだけで時代は、大きく変わる。

これからどんなフィギュアスケートが理想とされていくのか。舵取り役を果たしてしていくのは、きっと日本のふたりだろう。

 

羽生結弦と宇野昌磨。「『宇野昌磨、金メダルあるのでは』とマスコミがようやく気づいた理由」でも述べたが、ふたりは性格も、持ち味も、考え方も。そしてフィギュアスケートで大切にしているものも、面白いほど違う。そんな関係のまま競い合っていくことを、例えば宇野はこんなふうに表現している。

「僕と羽生選手。決して、和気あいあいとした雰囲気じゃない。いつも、戦い合う!って空気があります。僕はそんな空気が、一番好き。羽生選手と戦えることが、いちばん楽しいって思う」

日本のツートップふたり=世界のツートップふたり。足並みをそろえて同じ理想に向かって、ではなく、それぞれの目指すフィギュアスケートへ。

日本の誇るふたりのスケーターは、ここからさらにしのぎを削り、フィギュアスケート男子シングルをより面白く、より魅力的なスポーツへと導いてくれるはずだ。

名古屋の泣き虫スケーターは、いかにして世界を震撼させる4回転ジャンパーとなったのか? 小学生時代からの本人インタビューを中心に、コーチ、選手仲間、関係者など、二十数名の証言を元に解き明かす、奇跡のスケーターの成長の秘密。 辛抱強さ。負けん気。冷静さ。集中力。そして、聡明さ。 彼を作り上げるいくつものピースが絡まり、繋がり……。すべてのピースを組み上げた時、極上のパフォーマンスも、美しいスケーティングも、強力なジャンプも、強靭な精神力もすべて手に入れた、ひとりのアスリートの姿が浮かび上がる。