あれだけの事故が起きてもなぜ日本は「原発輸出」を続けるのか

大震災から7年、私たちが直面する問題
堀 有伸 プロフィール

一つは、複数の関係者から、原発事故に関連したADR(紛争解決センター)による和解案を、東京電力が拒否する事例が増えているという指摘を聞いたことである。

ADRは弁護士会などが運営する組織で、直接の交渉や裁判以外の方法で、仲介者も介入することで紛争の解決を目指す方法である。原発事故の場合には、国によって原子力損害賠償紛争解決センターが設置されている。

たとえば、事故によって強いられた避難による営業損害への賠償などは、こちらを通じて請求される場合が多いが、最近は東京電力(および背後に存在する国)がセンターから示された和解案を拒絶し、賠償を打ち切ろうとする流れが強まっている。

東京電力が自ら掲げた「3つの誓い」(1. 最後の1人まで賠償貫徹、2. 迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、3. 和解仲介案の尊重)が、虚しく聞こえる。

国および東京電力は、震災後の苦難の時を乗り越えて、再び1940年体制における系列上位の存在として行動しても、日本国内の残りの大多数が、それを忖度して系列下位の振る舞いを受け入れるようになったと判断したのだろう。

 

だから日本は原発を輸出する

そして注意しなければならないのが、原発の海外輸出を果たそうという動きである。

主に参照したテキストは、2014年に出版された鈴木真奈美による『日本はなぜ原発を輸出するのか』である。

この著者によれば、日本国政府が原発輸出に前のめりになるきっかけが、2001年に誕生したブッシュ政権が提唱した原子力回帰策であり、そこで意図されたのはアメリカが世界におけるエネルギー安全保障の面から原子力発電の位置づけを見直し、世界の原子力の平和利用のリーダーシップを維持することだった。

〔PHOTO〕gettyimages

ブッシュ政権以前のアメリカでは、スリーマイル島の事故の影響や、初期投資がかかることが敬遠されたことから、アメリカの原子力発電産業は危機的な状態に陥っていた。

この状況を好機と見て、積極的な活動を始めたのが日本の原子力産業であり、政府もそれを全面的にバックアップする姿勢を示している。

ブッシュ政権後は、アメリカであっても原子力発電への姿勢は積極的ではないという。その中で、日本が活発な活動を行って、この分野におけるシェアを確保して主導権を確保できれば、経済活動のみならず、安全保障においても今後も国際社会の中で存在感を維持できることを期待しているのだろう。

導入に前向きでない国に対しては、初期費用の融資も日本国政府が準備して売り込みを行っている。

しかし、それだけの融資を行った上でそれが回収できる保証はなく、もし原子力発電所の事故が発生したり、売却した国が原発の技術を用いて核兵器の開発などを行ったりした場合には、日本も責任を問われる可能性は十分にあるが、そのリスクは真剣な考慮の対象となっていない印象である。