世界ヘビー級戦線がクライマックスに近づこうとしている。
アメリカの強打者ワイルダー、イギリスの英雄ジョシュアという2人の対立王者が、3月にそれぞれビッグイベントの舞台に登場。まずは3日、ワイルダーが“ヘビー級のブギーマン(誰もが対戦を避けたがる選手)”と呼ばれてきたオルティスとの危険なテストマッチに臨み、ビッグファイトシリーズは幕開けする。
これまで見栄えの良い戦績を積み上げてきたWBC王者だが、その真価には依然として一部から疑問が呈されてきた。破壊的なパワーとステップインスピードはあっても、技術的に荒削りなのがその原因なのだろう。
自身のレガシーを真剣に捉えている感のあるワイルダーは、これまでも強豪との対戦を熱望してきた。過去にアレキサンデル・ポヴェトキン(ロシア)、オルティスとの試合が相手の薬物違反で流れる不運を味わったが、それでも「薬を使ってようが何だろうが対戦したい」とすら言ってのけた。
「薬物陽性はPED(運動能力向上)目的ではない」というオルティスの主張がほぼ認められ、昨年11月に一度はキャンセルされたキューバ人との激突がここでついに実現に至った。
「どういうわけか、子供の頃から常に価値を疑われてきた。成長してもそれは変わらない。周囲が間違っていると証明するのが好きなんだ。それ以上に素晴らしいことは存在しないよ」
1月下旬にニューヨークで行われた会見で、ワイルダーはそう語って目を輝かせていた。“世界ヘビー級準決勝第1試合”は、アメリカ期待の星にとっての“審判の日”。いまだに高評価を保つキューバ人を倒せば、口うるさいファン、関係者をついに黙らせることができるはずである。
一方、イギリスでは常軌を逸した人気を誇るジョシュアは、31日にこちらも無敗のパーカーと3団体統一戦を行うことになった。昨年4月のウラディミール・クリチコ(ウクライナ)戦では約9万人、10月のカルロス・タカム(フランス)戦では約7万8000人のファンを集めたのに続き、今戦でもサッカースタジアムに7万人以上の大観衆を集めることは確実。28歳にして、その興行価値はすでに歴史的なレベルに達していると言える。
タイトルホルダー同士の対戦にも関わらず、今戦ではジョシュアが断然有利と見られている。2016年12月にWBOタイトルを奪取した一戦も含め、最近のパーカーには勢いがないのがその要因。強敵を相手にした場合の攻め方も単調で、実際にパーカーにはこれ以上の大きな伸びしろは感じられない。
「ジョシュアは顎が弱い」というのは一部で定説になっているだけに、もちろん最後まで目は離せない。ただ、体格、パワー、近況に勝り、地の利も得たジョシュアが中盤以降に抜け出す流れが濃厚ではないか。後半ラウンドはもはや勝敗ではなく、ジョシュアの連続KOが続くかどうかが焦点になる可能性が高いと見る。
両者がそれぞれセミファイナルを突破すれば、その後に“決勝戦”の実現が見えてくる。ミドル級のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)戦がすでに陽の目を見た今、ジョシュア対ワイルダーこそがボクシング界最大の一戦。
現時点で2人合わせて59勝無敗(58KO)という強打者たちのスターウォーズがまとまれば、世界的なインパクトは中量級のビッグファイトとは比較にならない。特にジョシュア側のエディ・ハーン・プロモーターが上手く売り出せば、この1戦は莫大な興行となるはずだ。