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突然1億円の請求が…「負債相続」故人の借金に苦しむ人が急増中

あなたは大丈夫と言えますか?

「相続」というとみなさんはどういうイメージを思い浮かべますか?

棚ぼたでお金が入ってきてうらやましい。

お金持ちの問題だから自分にはあまり関係ない。

でも相続税とか、遺産争いとか、その辺は大変そう。

そのようなイメージの前提には、少なからず、「相続=お金」や「不動産=資産」という思い込みがあるのだと思います。

けれども相続の対象になるのは、実はプラスの財産だけではありません。借金や未納の税金の支払い義務、連帯保証人の立場、所有している不動産の固定資産税や管理費などの支払いの義務……。

これらも全てが相続の対象だということを果たしてどれだけの人が知っているでしょうか。

もちろん法律の専門家にとっては、これは至極当たり前の知識です。ところが、司法書士として多くの相談を受ける中で私は、世間一般の人たちがそれをきちんと理解していないという現実に直面しました。

多くの人があまりにも無関心な、相続の負の側面──。

それが負債相続です。

 

熊本に生まれ育ち、大阪に出て20代前半までバンドマンを夢見ていた椎葉基史さんは、母親が連帯保証人になっていた親戚の借金を引き継いだことをきっかけとして司法書士を目指し、2005年、わずか9ヵ月の試験勉強で合格率3%の難関を突破した。以降大手司法書士事務所を経て「つばき司法書士事務所」を開業。借金の相続問題の専門家がいない事実に気づき、2011年同所内に「相続放棄相談センター」を開設した。                                 

相談が相次いだことでセンターを法人化し、相続の専門家として年間700軒以上の案件を担当している。椎葉さんはこの度長年の経験を踏まえて『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」がわかる本』を刊行した。実例と解決策を凝縮した本書より、数回に分けて引用掲載する。

200万円相続の3年後に1億の借金請求!?

山下翔子さん(48歳)の父、富田康夫さん(83歳)が亡くなったのは、翔子さんの兄である長男の弘さん(52歳)が、康夫さんが社長を務めていた会社を継承する直前でした。

十分な準備はできていなかったものの、故人の希望でもあったことから、会社は予定通り弘さんが引き継ぐことになったのですが、その弘さんは、会社を安定して存続させるためにも、不動産や預貯金などの財産の全てを自分に相続させてほしいとほかのきょうだいに申し出ました。

つまり、翔子さんと、康夫さんの次男である翔子さんの弟敏弘さん(46歳)に「財産放棄をしてほしい」と持ちかけたのです。

ただ、翔子さんも敏弘さんもこの申し出には不服でした。弘さんが会社を継ぐことに異論はないものの、だからと言って、自分たちが一銭も相続できないということに納得がいかなかったのです。

きょうだい間での話し合いは平行線を辿りましたが、結果的には会社の顧問税理士からアドバイスを受けた弘さんが折れる形で、翔子さんと敏弘さんも、それぞれ200万円を相続することで決着しました。

それ以外の財産の全てを引き継ぐことになった弘さんは、会社のことできょうだいには今後一切迷惑はかけない、とはっきり言っていたので、翔子さんも敏弘さんも安心し、この結果にとりあえず納得していたそうです。

ところが、それから3年後。翔子さんと敏弘さんの元に、金融機関からの請求書が届きます。それぞれへの請求額はなんと1億円でした