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データ入力ばかりの事務職がAIに仕事を奪われないためにすべきこと

現場経験を生かす「5つのスキル」
AI(人工知能)が将来、人間の仕事を奪う——、そんな予測を盛んに見かけるようになった。中でも「単純労働」を行う事務職は、失業の可能性が高いと言われている。しかし、それに異を唱えるのが、グーグルでAIの機械学習の仕事に従事したのち、パロアルトインサイト社を創業した石角友愛氏。事務職ならではの強みを活かす、その「生き残り」戦略について語る。

先進国では3人に1人が失業する

マッキンゼーグローバルインスティチュートが2017年に発表したワールドレポートによると、2030年までに世界中の8億人の勤務者(ワーカー)が自動化により仕事を失うという。先進国から途上国まで、80カ国を調査した結果、アメリカやドイツ、日本などの先進国では3人に1人が失業するため、新しいスキルを習って転職準備に備えるべきだ、と書かれている。

AI技術を搭載した協働ロボットや自動化プロセスなどの影響をもろに受けると言われているのは、機械作業を行う人や工場作業員。そしてもう1つ、事務職である。

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事務職といっても様々だが、弁護士事務所で判例などを調査するパラリーガルのような専門的知識を要する事務職でさえも、フィナンシャルタイムズによると、あと20年で11万人以上が仕事を失うと予想されている。

ならば、専門的知識をあまり必要としない、顧客情報などを基幹システムに入力する担当者、いわゆる「単純労働」タイプの事務職は、AI化によりもっと仕事を奪われてしまうのではないか。そう考えるのも当然だ。しかし、私の考えはまったく違う。

 

私が代表を務めるパロアルトインサイト社は、シリコンバレーに本社を持ち、最先端のAI戦略と技術をクライアント企業に導入する事業を展開している。

そして、何百社という優良企業の現場を見てAI化を進めてきてわかったのが、「現場の人間ほど、企業のAI化プロジェクトに適している人間はいない」ということだ。

「現場の人間」がAI化に不可欠なワケ

例えば、私がGoogle本社で機械学習(AIエンジンに、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能を再現させようとする技術・手法)のプロジェクトを担当していたときのことだ。

最初は単純に「教師データ」(機械学習のモデルが学習するときに使う、事前に与えられたデータ)を仕分ける作業だけを繰り返ししていた。

機械学習を行うクラシファイアー(分類器)というエンジンに大量の画像データを学ばせて、「これは犬」「これは猫」のような識別ができるようにするのが私の仕事。しかし、その画像データにはゴミデータ(ノイズ)が含まれている。それを取り除き、きれいな教師データだけが残るように、ただただ画像チェックをしていたのだ。

一連の行為だけを見れば、「単純労働」にも思える。私も最初の数週間はシステムを理解することなどで精一杯で、「単純労働」を回すことに必死だった。しかし数ヶ月もしたら、大局的なことが見えてくるし、その先が見たくなってくる。

「なぜ、教師データにノイズが含まれているのか?」「もっと効率的なプロセスはないのか?」「この構造自体に改善点があるのでは?」

そこでエンジニアチームを集めて、片っ端から既存システムの説明をしてもらい、改善点を洗い出し、新しくプロジェクト化した。

現場の人間が培ったノウハウ(この情報はこの項目にデータ入力をする、というようなものも含めて)は、いわばAIエンジンの肥やしのようなものだ。

例えば、サンフランシスコ発のファッションテックベンチャー、スティッチフィックス社では、AIが消費者それぞれの好みに合わせた洋服を選ぶ。それを支えているのが3000人を超えるバイトのスタイリストたちの目利き能力、チェック作業だ。

スタイリストのインプットがAIエンジンをさらに学習させ、より精度の高いレコメンデーションを出力できるようにしている。また、流行りの変化に伴ってレコメンド内容を変えたりするのも、スタイリストとAIエンジンの二人三脚で行っている。