『ユーリ!!! on ICE』を観れば五輪フィギュアは百倍面白くなる

『羽生結弦は助走をしない』著者激賞!
高山 真 プロフィール

足元をアップにしてもお見事

そして、驚きは本編の中にもありました。ヴィクトル・ニキフォロフの演技の1本目のジャンプである4回転ルッツが、変な言い方ですが「きちんと4回転ルッツ」だったのです。

ルッツジャンプは、「回転方向が時計回りと反対」の人の場合は、踏み切るときの左足のスケート靴のエッジが、「後ろ向き(バック)で、体の外側に倒れている(アウトサイド)状態」のとき(この2つの状態を兼ねているので「バックアウトサイドエッジ」と呼ぶ)に、右足のトウピックをついて踏み切ります。で、左足のエッジがちゃんとバックアウトエッジになっていたのです。

それも、「さあ見てください!」と言わんばかりに、足元がアップになっていた。

特に、フリップとルッツの作画! フリップは、踏み切るとき、スケート靴のエッジが「後ろ向きで、体の内側に倒れている(インサイド)状態」のとき(バックインサイドエッジと呼ぶ)に、右足のトウピックをついて踏み切ります。ルッツとの違いは、バックの「アウトサイドか/インサイドか」。これが明確に描き分けられていました!

 

そして「スケーターが『滑る』のを見るのが大好き」な私にとって、ヴィクトル(そして、離れた距離からヴィクトルに寄り添うように同じプログラムを滑る勇利)の演技のほとんどが、「滑るシーン」で構成されていたことの喜びたるや。

スケート靴のエッジが、左右それぞれの足で、「フォア(前向き)/バック(後ろ向き)」、「インサイド/アウトサイド」に踏み替えられ、それと呼応するように上半身と腕が美しく動いていく……。

演技が終わったとき、私はスケートファンとして拍手しながら、作画を担当したスタッフの方々の労力を思ってクラクラしてしまったほどです。

そうした「作画スタッフの労力」は、最終回までジンジンと感じられました。ジャンプの踏み切り時の「描き分け」は最後まで健在でしたし、滑るシーンのナチュラルさは最後までリアリティを失っていなかったように感じます。テレビのアニメは時間的にも予算的にもさまざまな制約があると聞いたことがありますが、そんな中で「よくぞここまで」と思う作品だったのです。スケートファンとして感激しました。

「ゲイの私」が感激した理由

次は「ゲイの私」が感激した部分を……。

『ユーリ!!! on ICE』がBL的な人気を博していること(ここは「博していた」と過去形にしなくてもいいでしょう)は、BLのことをまったくと言っていいほど知らない私の耳にも入ってきていましたし、いまでも時々入ってきます。

BLという分野に、当事者であるゲイがどのような感情をもっているか、は、ひとりひとりのゲイによっても違いますし、ひとつひとつのBL作品の内容によっても変わってくるでしょう。私は基本的に「男とは〇〇」とか「女とは〇〇」とか「ゲイとは〇〇」みたいに、主語を大きくするのは嫌いなタイプ。

そんな雑なくくりで語れることなどひとつもない」と思っている人間です。そして同時に私は、「BLとは〇〇」みたいなことを語るには、BL作品を知らなすぎる。ですので、「私という人間が、ゲイとしての部分で、『ユーリ!!! on ICE』の何に感激したか」を述べたいと思います。