1月に『羽生結弦は助走をしない』という本を出版した、高山真と申します。本を発売してからメールや読者ハガキなどでご意見・ご感想をいただくようになりましたが、その中の数通に、とても意外で、かつ印象的なご感想がありました。
その方たちの共通点は、「アニメ『ユーリ!!! on ICE』の大ファンで、それをきっかけに実際のフィギュアスケートにもハマるようになった」という点です。
そういった方々が、
「ユーリがオンエアされていた時期にリアルタイムで読めていたら、と思ってしまうほど面白かった。私の副読本にしたい」
「まだまだ知らないことだらけですが、何かものすごく大切なことが書いてあるような気がします」
「同じくYOI(これは『ユーリ!!! on ICE』の頭文字ですよね?/カッコ内 筆者注釈)が大好きな友人にもすすめます」
といったご感想をお寄せくださったのです。
中には、
「こういう層からの意見はご迷惑かもしれませんが」
という一言を書き添えてくださった方も……。
そんな! 迷惑どころか、どのご感想も本当に嬉しくありがたいものでした。だって、私も『ユーリ!!! on ICE』を見ていましたし、本当に素晴らしい作品だと思っていたのですから。
先に申しておきますと、フィギュアスケートは1980年からディープにハマっておりますが、「本格的なレッスンを受けたことがなく、遊ぶ程度のことしかできない」人間です(まあまあ真剣にやっていたスポーツはテニス)。つまり「とにかく見ることが大好き。見たものを自分なりに味わい、とことん愛でて、分析するのが大好き」というタイプのスケートファンです。
漫画やアニメファンの中に、「いろんな作品にはディープにハマってきたけど、実際に漫画作品を描いていたり、アニメの仕事をしているわけではない」という方たちがいらっしゃるとしたら、そういう方たちと同じ層といえると思います。
今回出した本は、そんな立場の人間の「私のツボ」を、自分なりに可能な限り詳細に書いたもの。そんな本が、アニメファンのみなさんにも評価していただけるなんて! しかも自分がとても楽しみに見ていたアニメのファンの方々に! 本当に小躍りするくらい嬉しい経験だったのです。
もうひとつ、自分のことを申しますと、私はスケートファンであり、LGBTのG、ゲイです。『ユーリ!!! on ICE』は、スケートファンの私、そしてゲイの私、どちらの立場で見ても、本当に素敵な作品でした。その両方の立場からの「私のツボ」を、今回書かせていただこうと思います。私にあてて「つながる気持ち」を先にくださった「YOIファン」のみなさんに、何か少しでもいいから「つながる気持ち」をお返しできますように。
『ユーリ!!! on ICE』というアニメが始まるというニュースに最初にふれたとき、「スケートファンの立場として、これは見ないと!」と思ったいちばんの「ツボ」は、「スケートのシーンの振り付け監修は宮本賢二氏がおこなう」という点でした。
宮本賢二氏は、スケートファンなら知らない人はいない、日本を代表するフィギュアスケートの振付師。その宮本氏が監修をするなら、実際のフィギュアスケートのシーンも素敵なものになるはず、と予想したのです。
そして第1話のオンエア日、まず驚いたのはオープニングでした。ジャンプをしているのは1回だけ。あとはアニメのキャラクターが、ずっと美しいステップを踏み続けているのです。
「この作品は、『スケートとは、滑りそのものの難しさや美しさを見せる競技』だと心から理解している人たちが作っている!」
と、狂喜乱舞したものです。加えて言うなら、そのステップは、「現実にはありえない体や足の動きではなく、ものすごくリアルな動き」になっていました。ものすごくきれいな滑りをするスケーターを動画撮影し、その動きに忠実にアニメーションを作っていく……、そんな非常に手が込んだことをしていることが見て取れたのです。スケートファンとして、こんなに嬉しいことはありません。