乱歩賞受賞・若手作家二人が全面対決!勝つのは「白」か「黒」か

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下村 敦史, 呉 勝浩

――今年は乱歩賞は受賞作が出ませんでしたが、それについてはどう思われていたのでしょう?

 寂しいとうのはありました。でも、乱歩賞というのは新人賞としては大きすぎて、それだけで作家がジャッジされてしまうところがあると思います。なので、中途半端な形で出版してしまうことが受賞者にとっていいのかどうかはわからないところがありますので、複雑な気持ちではあるんですが。

やっぱり乱歩賞ですから、下村さんのように満場一致とか、佐藤究さんのように問答無用でとんがっているとか、はっきりしているものが出るのがいいなと思います。でもまぁ寂しいです。

下村 驚きましたし、寂しかったですね。僕はそれまでに応募したうち受賞作が一番高く評価されて、4回は最終候補で落ちたわけですが、その作品の中のどれかで受賞しなくてよかったなと本当に思っています。受賞してしまっていたら、依頼にこたえていく力がなかっただろうな、と。

 難しいですよね、タイミングもありますし。

下村 でも呉さんは2作目の『ロスト』から大藪春彦賞の候補になって、作品も多く出ていて順調じゃないですか。

 これは個人的に自分の責任だなと思っていることがあって。受賞作が必ずしも広く世の中に受け入れられなくても、作家として生きていくことができるというのを証明したいという思いがあるんですよね。

僕がこのままヒュイって消えてしまったら、やっぱり受賞作が受け入れられなくては駄目だ、生きていけないという状況になってしまうだろうなと。それには抗いたいですし、そうしなければ挑戦できないと思うんです。

結局、手堅い作品ばかりが応募されるようになってしまうのはやっぱりつまらないし、僕は嫌だと思うので。受賞作だけじゃねぇぞ、まだ俺は生きていくんだぞ、というのはあるので、自分が乱歩賞受賞者であることが良くも悪くもモチベーションになっているところはあります。

下村 乱歩賞は、最初は雲の上の賞で、友人にも「なに血迷ってるんだ」と言われるぐらい遠い賞だったんですが、こうして受賞してよく言われるのは、乱歩賞作家という肩書がついている間はまだまだだよ、と。

この肩書きが外れても認識される作家になるのが大切だと言われるんですが、やっぱりこれが外れるのは寂しいなと思います。ずっと背負っていたいですね。それでなくとも乱歩賞は先輩の名前も大きいですから、今の乱歩賞作家はちょっと……と思われないように一作一作書いていければと思っています。

 新人賞なのに、ミステリー界の象徴になっていますよね。ミステリー界を支えているところもあると思うし、ここが輝くのと、光が失われてしまうのでは、全体的に変わってしまうと思います。なによりも僕にとっては、やはり、感謝する賞であると同時に、戦わなければならない賞ですしね。いやぁ、もう一回応募したいですね

下村 もう一回(笑)

 どうしよう、一次落ちしたら。洒落にならない(笑)。

呉勝浩氏(左)と下村敦史氏

――今後、乱歩賞でどのようなライバルが登場してきて欲しいでしょうか。

 僕はやっぱり挑戦している人ですね。実力があることはもちろん大切だと思いますが、個人的な好みとして、なにかしらに挑戦している人の方が惹かれますので、そういう人が出てきてくれたら嬉しいし、そういう人が出てきたら焦るなと思います。

下村 そうですね。それに、やっぱり乱歩賞をとった肩書きで終わらずに、バリバリ書いてアピールしてくれる受賞者が現れるといいなと思いますね。

――それでは最後に、読者にアピールをお願いいたします。

 とにかくエンターテインメントとして頭から最後まで楽しめる作品を書こうと決めて、これが面白くないと思われたら困るぞというぐらいの気持ちで書き上げた作品です。色々と自分の想いを込めることもできたかなと思っています。

今回、文庫化にあたって、ちょっとゴツゴツした部分も直せた気はしているので、そこはもう、自信を持って面白い作品と言えると思っていますから、ぜひ読んで下さい。

――勝つのは俺だと?

 当たり前です! まずページ数で勝ってる(笑)。

下村 警察小説は人気のジャンルで、本当にたくさんの名作があると思うのですが、この『叛徒』がそういう警察小説の一つとして認知されたら嬉しいなって思っています。

文庫化にあたって不満だったと思ったところを修正し、かなりブラッシュアップもして、ようやく自分でも満足できる出来になったので、一人でも多くの警察小説を好きな方に手にとって欲しいと思います。

――下村さんの意気込みはどうでしょう?

下村 そうですね 、負けませんよ(笑)

白黒つけるぜ! RANPOの乱 下村敦史vs.呉勝浩 若手乱歩賞作家対決! ミステリー界の最高峰・江戸川乱歩賞。その受賞者であり、気鋭の若手作家である下村敦史と呉勝浩がお互いの文庫新刊でガチバトル! Webで人気投票を行います! “贖罪”の白いミステリー(『ロスト』)か、“裏切りの”黒いミステリー(『叛徒』)か。「こちらの方を読んでみたい」、「こっちの方が面白かった」でもOK。URLからお気軽にご投票ください! 投票期間は2018年5月14日(月)まで。投票いただいた方から抽選で10名様に、著者二人のサイン本をセットでプレゼントいたします! http://ranpo-ran.com

・『叛徒』(“裏切り”の黒いミステリー)あらすじ

通訳捜査官の七崎隆一は、正義感から同職の義父の不正を告発、自殺に追い込んだことで、職場でも家庭でも居場所がない。歌舞伎町での殺人事件の捜査直後、息子の部屋で血まみれの衣服を発見した七崎は、息子が犯人である可能性に戦慄し、孤独な捜査を始めるが……。“正義”のあり方を問う渾身の警察ミステリー。

・『叛徒』編集者コメント

ミステリーを書く上で“主人公を盲目にする”という難題を鮮やかに料理し、雪山という“密室”にも進出する下村さんが今回選んだテーマは“警察小説”。そうなんです! 下村さんは警察小説もイケるんです! 息子が犯人かもしれない状況で、どんな選択をとるのが“正義”なのか――。綿密な伏線に根差した二転三転する展開の先に、さらなるどんでん返しが待ち受けています。今回も負けませんよ、呉さん!!――編集担当N

下村敦史(しもむら・あつし)1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補に、翌年に刊行した『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補となった。他の作品に『難民調査官』『サイレント・マイノリティ 難民調査官』の「難民調査官」シリーズ、『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』がある。

・『ロスト』(“贖罪”の白いミステリー)あらすじ

無断欠勤が続く村瀬梓の勤めるコールセンターに掛かってきた営利誘拐の犯行電話。身代金の要求額は一億円、輸送役は百人の警官。なぜ、家族ではなく、会社に。なぜ、百人も必要なのか。警察と“関係者”たちは、ピュワイトを名乗る犯人に翻弄されていく――。罪に期限はあるのか。圧倒的筆致の“誘拐”ミステリー。

・『ロスト』編集者コメント

『ロスト』は、ミステリーの王道「誘拐もの」です。コールセンターに掛かってきた犯行電話。身代金の要求額は1億円、輸送役は100人の警官――序盤でグッと掴み、それでいてただの「誘拐もの」で終わらないのが「呉さん流」。誰にでも起こりうる後悔と償いと赦し、他人事ではないシーンの連続に、600ページはあっという間に終わります。乱歩賞本選では一期上の下村さんに最終選考で敗れましたが、直接対決第二弾、リベンジです。――編集担当T

呉 勝浩(ご・かつひろ)1981年青森県生まれ。大阪芸術大学像映像学科卒業。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。受賞後第一作『ロスト』が第19回大藪春彦賞の候補となり注目を集める。その他の作品に『蜃気楼の犬』『白い衝動』『ライオン・ブルー』がある。