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一風堂ニューヨーク店の成功でわかった、日本人の「ヒドい勘違い」

日本ブームで何でも売れる、は大ウソ
ムーギー・キム プロフィール

アメリカに進出する日本人の誤解「あるある」

ありがちな失敗(その1)「日本」と言えば売れると思っている

確かに世界で和食店は増えています。寿司のファンも多いです。だからといって、世界中で日本ブームが巻き起こっていると思うのは、いくらなんでも勘違い。日本に好意的な印象を持っている人は多いと感じますが、実際のビジネスでお金を払うかどうかはまた別の話。ましてや「メイドインジャパンなら売れる」的な考えは、時代錯誤もはなはだしいというほかありません。

ニューヨークでの寿司イベントニューヨークでの寿司愛好家の様子。イベントファンが多いのは確かだが…… photo by gettyimages

けれども、筆者が初めてお会いするクライアントのなかには、そんな安易な考えに頼っている方が少なくありません。ニューヨークの人から見た東京というのは、東京の人からみた日本の地方都市のようなイメージ。東京は聞いたことはあるし、ある程度は認めるけど、ニューヨークで通用するかは別の問題でしょ、という感じなのです。

 

ありがちな失敗(その2)「モノさえよければ売れる」という誤解

日本には「いいモノを作れば売れる」という、一種のものづくり信仰があります。しかし、アメリカではそうはいきません。「何も言わなくても、わかる人にはわかってもらえる」などというのは甘い幻想です。過去の製品からの性能向上をアピールするだけでも不十分で、これまでにない目新しさや、どう役に立つのかをアピールすることが求められます。

日本の商品をニューヨークに売り込みたいという人に共通なのは、商品ありきのプロダクトアウトの発想で話がはじまることです。最初に相談されるのはたいてい、「日本で作ったいい商品があるんだけど、アメリカで売れないか」。「アメリカにある課題を解決できるから、アメリカに進出したい」と考えている人に会ったためしがありません。

また、日本(本社)側の事情で、アメリカでの売上目標があらかじめ設定されている場合が多いことにも驚かされます。日本での売れ残りを売り切るのが販売目標ということもありました。アメリカ市場の状況を考えずに、国内事情ありきで話が進んでいるので、現実離れしたプランを聞かされることもよくあります。

外国で成功したいなら、その国のどんな課題に対してあなたの商品がどう役に立てるのか、そのことをしっかりと考える必要があります。

堂々と語れば、自然と貫禄が出てくる

では、海外展開で成功するためにはどうしたらよいのでしょうか。その秘訣はいくつもあるのですが、日本人にとって特に重要と思われる3点について紹介しましょう。

①あたかもその分野の第一人者として、商品の課題解決機能をひと言で表現する

まず大切なのが、進出先の地域でオンリーワン・ナンバーワンの存在として、自分たちの売ろうとしているモノやサービスが、買い手の課題をどう解決できるのか、ひと言で説明できることです。買い手がその商品を買うべき理由を、堂々と淀みなく一文で説明してください。

ニューヨークは世界中からさまざまな個性を持ったモノやサービスが集まる場所。次々と新しいものが出てくる競争のなかでは、たとえ日本でナンバーワンであっても、ニューヨークにすでにあるもののコピーと見られてしまったらお終い。逆に、日本では2番手、3番手、いや10番手でも、ニューヨークでオンリーワン・ナンバーワンならチャンスはあるのです。

筆者もコンサルティングというサービスを売っている一人です。何度も失敗を重ねました。

東京での実績をアピールしても大した関心が得られず、「で、私の課題をどう解決してくれるの?」と聞かれ、こちらが必死に答えようとしているうちに相手の興味が失われていくのがわかり、あっという間に打ち切られたことも幾度となくあります。アピールポイントを間違えたために、5分でミーティング終了ということもありました。

それがうまく行きだしたのは、自分を「世界最高水準の日本の製造業のオペレーションで実績のあるコンサルタント」とひと言でアピールするようになってからです。正直言って、日本の製造業コンサルタントのなかでは平均程度の私ですが、ニューヨークでは珍しいタイプのハイレベルな経験をもった人材とみなしてもらうことができたのです。

一つのトピックに精通した人間として堂々と語りだすと、貫禄のようなものが出るのでしょうか。相手は一目を置いて話を聞いてくれるのです。

なお、筆者は英語が堪能ではありませんが、それは問題ではありません。自分の専門分野に関する単語とアピールするための表現はしっかり覚えて、あとは自信たっぷりにふるまうことです。英語の文法や発音をエレガントにするための努力よりも、伝える中身で勝負しましょう。