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ノルディック複合、欧州勢が警戒する「アキト・ワタベ」の強さ

「プレッシャーは感じない」
松谷 誠治朗 プロフィール

そして、会見も終わり、日も落ちかかって白馬のジャンプ台が薄暮に包まれ、選手たちも記者たちもみな引き上げた後、ふと気になって競技場に戻ってみると、そこには数人のファンに囲まれて談笑する渡部選手の姿があった。

最後まで会場に残り、ファンサービスに努めていた。どうやら、白馬村に住む知り合いでもあるらしい。その1人1人と丁寧に握手し、記念写真におさまりながら、渡部選手がこう言っていたのを聞いた。

金メダルだけが目標って言っておけば、テレビの人たちは満足してすぐ終わってくれるから

これはもちろん、渡部選手がいい加減なメディア対応をしているというわけではない。いつも真摯かつ誠実に取材に答え続けるのが渡部選手だ。

だが、試合となれば相手も必死だ。勝負は時の運であり、結果はどちらに出ることもあることを、勝負師であるほど知っているものなのだろう。

その中で、もちろん渡部選手は金メダルを目指してベストを尽くすに違いない。

だが、欧州の有力選手たちと渡り合い、積極的に学んだ英語でコミュニケーションをとりながら、かの地のワールドカップを転戦する日々を戦い続けてきた渡部選手は、いっときの結果以上の何かについて考えているような気がする。

ヨーロッパ人が考え出したオリンピックは、平昌、東京、北京とこれから8年間にわたり極東での開催が続く。

アジアの、日本の私たちが、真の意味で世界の舞台で渡り合うとはどういうことなのか。

たとえこの競技が欧州発祥だとしても、そこで活躍する自分がその価値観にひたすら同化し飲み込まれるのではなく、異邦人のアイデンティティをどう主張していくのか?

渡部選手にとって2018年のオリンピックは、白馬から平昌に向いながら、その答えを求める道筋の一つかもしれない。