日本もグローバル化が必要だ、などと言う。国際標準を知りそれに適合しなければ、などとも言う。
その場合の、「グローバル」とは何だろうか。「国際」とは何だろうか。
そこでの規範や不文律などを作っているのは誰か。結局のところそれは欧米人であって私達ではない。
国際化などと言っても、結局それは彼らの言語の一つである英語を学び、彼らが作った「スタンダード」に従うという、屈従と隷属に過ぎないのではないか?
いやそれならアジアの辺境に生まれ育った私たちは、そういうものに反発し、戦うべきなのか? それとも第三の道があるのか?
平昌オリンピックの金メダル候補、ノルディック複合の渡部暁斗選手は、こうした問いかけに、その戦いの中でいつも直面しているに違いない。
そう思ったのは今からおよそ1週間前、五輪開幕前週の週末、渡部暁斗選手の生まれ故郷である長野県白馬村に行った時のことである。
シーズン中は欧州各地を中心に転戦するFIS(国際スキー連盟)ワールドカップの試合が、2月3、4日と白馬を舞台に開かれ、渡部選手はその試合に出場していたのだ。
2日間にわたるその連戦で、渡部選手は初日を優勝、2日目は3位という好成績を収め、ワールドカップ総合ポイント首位の地位を固めた。
この白馬大会直前のオーストリアで開かれたワールドカップ3連戦で3連勝していたことから、渡部選手の五輪直前の成績は5戦4勝3位1回ということになり、平昌での金メダル獲得の期待が否応なく高まっている。
話は少しそれるが、ノルディック複合の試合を現地で見たことのある人は少ないだろう。私も今回のワールドカップ白馬大会での体験が初めてだった。
TVでは結構見ている。90年代のアルベールビルやリレハンメルオリンピックで荻原兄弟などが大活躍して以来、オリンピックの中継は必ず見ているし、近年は2年に1度の世界選手権がNHKBS1で放送されたり、五輪シーズンにはCSチャンネルでワールドカップの試合も何試合か放送されるのを見てきている。
そのうえではっきり言えるのは、ノルディック複合は、実際に見て極めてスリリングなスポーツだということだ。ルールが毎年改善されて「見て楽しい」ものにどんどんなっていることもあり、実に面白い。
競技の「前半」として行われるジャンプは、人間が百数十メートルを飛行するという異次元状況を目撃する迫力の体験だし、「後半」のクロスカントリーはもっと面白い。
ジャンプでの得点差を秒数に換算し、成績の良い選手から時間差をつけてスタートして走り出す。そして10kmおよそ25分のレースで最初にゴールした選手が優勝、ということなのでとても分かりやすい。
コースを区切るロープのところまで近づけるので、ある選手は独走し、またある選手は集団で疾走するその姿を文字通り目の前で見ることができる。
選手は時には走路をロープギリギリにとってきて、時速50kmものスピードで自分の鼻先30cmくらいのところを次々と滑り抜けていくその迫力たるやすごい。
白馬の場合、一周2kmのコースを5周するので、5分おきくらいに先頭を争う選手たちがやってくる。
そして今回の白馬大会でもそうだったが、最後はゴール直前、順位を争って死にもの狂いでスプリントする選手たち、そして「アキトー」と自然発生的に口々に叫ぶ観衆の声……という感動絵図が目の前に展開されるのだ。