ホステスのタイ人妻に支えられる月収10万円男の「幸福とため息」

寂しき日本人たち②
水谷 竹秀 プロフィール

メイの月収は2万5000バーツ(約8万5000円)。これに客からのチップを入れると、コールセンターで夫が稼ぐ月収とほぼ同額だ。まさに夫婦二人三脚で一家を支えていた。

「ここはいいお金やけどすぐ辞めたい。今は我慢。仕方ない。旦那さんもつらいと思う。旦那さんの給料が少ないのが問題。彼も早くいい仕事を見つけないと。なんで日本人の旦那なのに生活が大変なの?ってよく言われる。

でもうちの旦那はいい人だから。これも運命。お金持ちと結婚しても幸せじゃないかもしれないでしょ? 大変でも幸せならいい。今は全然幸せよ。ちょっと辛いけどね……」

矛盾する言葉の行間に、メイの複雑な心境が読み取れた。

 

8カ月というスピード婚

メイがコールセンターで働く田中純平(仮名、30歳)と結婚したのは今から9年前。当時、メイは観光ガイドとして、バンコクから車で2時間半ほど南に離れた「パタヤ」と呼ばれるビーチリゾートで働いていた。そこへ観光で訪れた田中と出会ったのだ。以来、交際を始めて8カ月というスピード婚だった。その後は訪日して夫の実家で4年間暮らした。

しかし、夫が勤めていた製造工場がリーマンショックの影響を受け、リストラされた。水道関係の仕事に転職をするも収入が前職の半分程度まで減ってしまい、長続きしなかった。そして夫と娘を連れてタイへ移住することに決めた。

それは2014年春のことだった。

夫はタイ語に堪能ではない。学歴もなく、工場や土木関係の職場を渡り歩いてきた夫が就ける仕事といえば、とりあえずはコールセンターしかなかった。

田中は振り返る。

「リストラの話が出た時点でタイに住むことは考えていました。妻がタイ人というのもありますし、僕もタイが好きだったので。コールセンターについては、知人から電話を取る業務だと聞いていました。1日中オフィスワークをこなすのも初めてだったので、その時点では仕事に対してやる気はありました」

藁にもすがる思い

私が田中に会ったのは、BTSの終点、ベーリン駅の近くにあるバーレストランだった。しゃれた黒縁眼鏡をかけた彼は、黒いタンクトップにチェックの短パン、ビーチサンダルという、かなりラフな出で立ちだ。

オペレーターたちはバンコク中心部から少し離れた地域に、家賃5000バーツ程度(約1万7000円)のアパートを借りていることが多い。中心部は家賃が高いためだ。とはいえオペレーターの取材で最終駅まで来たのは、この時が初めてだった。駅周辺にはショッピングモールもなく、少し離れた場所にコンドミニアムが建っているだけで、中心部に比べるとやはり閑散としている。田中は家賃6000バーツ(約2万円)のアパートの部屋に、一家5人で肩を寄せ合うようにして暮らしていた。

「コールセンターの業務を始めてみて、思ったよりしんどいことに気づきました。僕は肉体労働をこれまで経験してきたので、ずっと座っているのは精神的にきついんです」