大物ヤメ検弁護士が語る「地面師事件が続発する本当の原因」

世田谷地面師事件の真相④
(前回まで)2015年、大物地面師グループに騙され、5億円を支払った東京都内の不動産業者・津波幸次郎氏(仮名)。「実行犯」の一人を捕まえ、町田署に突き出したのだが、あろうことか警察は被害者である津波氏も「共犯ではないか」と疑い、聞く耳を持たない。「署の前で焼身自殺をしてやろうか」とまで思い悩んだ津波氏だが、ある弁護士に相談したことで、事件は大きく展開することに――。ジャーナリスト森功氏による「地面師ルポ」渾身の最終回。(第一回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53739)

大物ヤメ検弁護士の回想

焼身自殺まで考えたという地面師事件の被害者・津波の相談相手となったのが、同社の顧問弁護士を務める大鶴基成(61)だった。その大鶴に会って話を聞いた。

「当時の手帳で確認すると、津波社長が僕のところに相談に来たのは、2015年6月1日の月曜日でした。『警察がぜんぜん信用してくれない』と、まさに切羽詰まった様子。これはいかんと思い、翌日に社長といっしょに町田署に行ったんです。で、刑事課長をはじめ5~6人の刑事さんと狭い部屋で会いました。

僕が『小さな会社で5億円も騙し取られて大変なので、早く捜査をして下さい』と願い出ると、驚いたことに課長は社長の前で、『誰が被害者か分かりませんからねっ』と笑うのです。さすがにムッとしましたね」

 

周知のように大鶴は、1990年代に東京地検特捜部でゼネコン汚職や第一勧銀総会屋事件を手掛けてきた。2005年に特捜部長に就任し、東京地検次席検事時代に摘発した2010年の陸山会事件の陣頭指揮を執ったとされる。11年8月に退官し弁護士に転身した、大物ヤメ検弁護士である。

津波の会社の顧問弁護士として登場したその大鶴を前に、警察はそんな不遜な態度をとったというのだが、半面、当の大鶴自身は警察の真意を冷静に分析する。

「つまり警察は裏の裏を読んだんですね。不動産のプロが、なぜこんなふうにコロッと騙されるんですか、変じゃない? ってところでしょうか。それに加え、取引現場には司法書士もいましたから、ひょっとしたらこれは、津波社長が松田(東亜エージェンシー社長の松田隆文)たちと組んで、銀行から5億円を騙し取った共犯ではないか、と考えたみたいなんです」

そう説明しながら、大鶴は事件発生当初の捜査当局の姿勢に対してこう憤った。

「そこで僕は言いました。『仮に僕が町田署の刑事課長としてこの事件を担当するなら、5人の捜査員を専従で当たらせて、1週間で彼らを逮捕するよ』ってね。もちろんそう簡単に完全な裏付け捜査は出来ない。

たとえば、通信のキャリア業者からメールを押さえ、連絡網を解明するなどという捜査はすぐには間に合いません。しかし、少なくとも詐欺や業務上横領の容疑で身柄を押さえることは出来るし、そうしなければならない。僕は警察にそれを言ったんです。

すると、彼らは『先生、そんなこと気楽に言うけど、検事が釈放するんですよ』と反論するのです。それは、わからなくはありません。(腰の引けているような)今の検察の体質からすると、逮捕しても釈放しかねないですからね」