産業医が明かす「外資系企業で働く人のメンタル事情」ホントのところ

潰れる人を生む「3つの特徴」
武神 健之 プロフィール

特徴(2)強いプロ意識が求められる

2つめの特徴として、そのような環境で働くこととも関係しますが、強いプロ意識を持つことが求められます。

外資系ではプロ意識が強くなければ生き残れません。プライベートで付き合いがある人同士でも、職場ではプロ対プロであり、遠慮なく意見を戦わせます(が、その後気さくにランチにも行けます)。プロとしての技量や結果が評価されているのを皆自覚していますから、結果が出せずクビになる同僚に対しても、比較的ドライです。

 

会社で大規模なリストラがあったあと、xxさんがクビになったのがショックとか納得できないという相談よりも、その結果自分の業務量が増えたり役割が変わったこと、または増した責任への評価(ボーナス)がないことを不満やストレスに感じて相談しに来る人の方が圧倒的に多いです。

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例えば昨年産業医面談に来た30代前半の女性Aさんは、一昨年前夏に同僚が退職したあと、新たな人員補充がないまま働いていました。チームの誰もが仕事の時間も量も3割増になったと感じていたそうです。

それでもAさんは、一昨年秋の人事評価ではよい評価を得て、年に一度のボーナスを楽しみに頑張っていたそうですが、実際に支給されたボーナスは自分の予想をはるかに下回る額だったのこと。その後、やり場のない怒り、ショック、無気力感等を仕事中に自覚し始め、次第に眠れない日も増えてきたと相談に来ました。

産業医面談では、睡眠を確保するために医療機関を受診し睡眠薬を飲むべきか主治医と相談することを提案するとともに、そもそも「何のために自分は働くのか」「自分の働く意味・意義」について一緒に考えるようにしました。

数回の産業医面談ののち、ボーナスの額よりも大切に思えることが見つかったAさんは、休職することなく現在も働いています。睡眠薬はもうほとんど飲んでいないとのことでした。

特徴(3)ビジネスの変化が激しい

外資系のハードさの特徴3つめは、ビジネスの変化が激しいことです。短期的にも長期的にもです。

日本に拠点のある外資系企業のほとんどは、欧州と米国にも拠点があります。短期的に言えば、日本支店が閉じている間も、欧州、米国と順番に開いていますので、1晩たつと仕事が2日分進んでいることは普通です。1日の始まりは、2日分の仕事に追いつくことから始まることも多々あります。

長期的視点でも、ビジネスの変化は激しいです。世界の情勢変化がタイムリーに業務に反映されます。ある国の法律変化によりその企業全体の業務が変わるのであれば、日本支店でもそれが求められます。また、ある部署の仕事がほかの国でもっと安くできるのであれば、部署ごと異動や閉鎖になることは日常茶飯事です。

例えば、10年前は電波塔を建てていた会社があったとして、日本全国ほとんど全域で電波がカバーされるようになると電波塔はもう不要です。するとその会社は、ITコンサルティング業務などをメインのビジネスに替えていきます。

新しい業務に必要な能力を持つ人を社内で育てることもしますが、社外からその能力のある即戦力をスカウトすること、そのために古い社員をクビにすることは、ある意味合理的な判断として優先されるのが世界では普通です。そのような中で自分の雇用を守るためには、時代の先を読み自分の能力を磨くか、自分の能力を必要としてくれる会社に転職するかです。

余談になりますが、2017年は、どのような会社でも、IT系技術者は転職が早い印象でした。業界をまたいでの転職も多々あり、人工知能(AI)やフィンテックなど、言葉の流行り以上のものを個人的には感じました。

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このような外資系のタフでハードな職場環境では、当然、潰れる人も出てきます。しかし、9割以上は元気に働いており、メンタルヘルス不調者の割合は世間がイメージするほど多いわけではありません。

私の経験で言えば、入社後半年以内にメンタルヘルス不調になる人は、その本人の能力とのミスマッチ(採用時の問題がほとんど)か、仕事の能力はあっても適応力にかけたケースが大多数です。また、入社後か昇進後2-3年目は、「up or out」の評価判断時期でもあり、そのプレッシャーが原因となるメンタルヘルス不調が多いと思います。

とはいえ、外資系ならではの従業員が潰れる理由が垣間見られることも多々あります。その詳細と対策を、次の記事<外資系企業で働いても「メンタルを潰されない人」の3つの特徴>でお伝えします。

筆者の武神氏が年間1000人以上と面談して発見した効果的なストレス解消スキルを指南