韓国で発売「安倍首相暗殺」を予言するトンデモ反日小説の中身

平昌五輪の前にもう一度考えておきたい
竹嶋 渉 プロフィール

「さっきから聞いていると、しきりに犯罪うんぬんなさっていますが、世の中の生命のあるものは力で生存し繁栄するものではありませんか。

それは一寸の虫から国家間の関係に至るまで、変わることのない自然の法則なのです。自分にないものがあれば、自分で奪ってでも力を蓄えてこそ、他の国に軽蔑されず、守り抜くことができるものです。

それを犯罪と罵倒してはいけないでしょう。おっしゃったように、力がなくて消滅した国が人類の歴史上、いくらでもあるではないですか。そのように消滅してしまえば、もっともらしい大義名分は何の役に立ちますか」

「何を純真なことを言っているんですか。国家間で起こることに、昔の出来事が通じますか。一旦、口実さえあれば、ひそかに言いがかりとなる部分を探し、因縁をつけるのです。

そうすれば、ある日、ぺろりと平らげることもできますし、少なくとも、外交交渉で有利な立場を占めることができるでしょう。これが優秀な外交です。政治でもあります」

「考えてみてください。国民はそれがこじつけであれ、他人のものも自分のものだという欲望をあおりたて、そこに民族主義という油を注げば、誇らしく思い、嬉々として、この方こそ偉大な指導者だ、このように魂が抜けてしまうものです」

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これにあきれ返った安重根は「では、お前ら、日本の国民が傷つくことについてはどうするのか」と尋ねる。

「国民というものは、本来、国のためにいくらでも犠牲にすることができるものではないですか。国がなければ国民もないからです。我々日本国民はその点でまったく立派です。

命令さえ下せば、飛行機に乗って敵の船に向かって突進することもためらわなかったことを、歴史が証明しているではありませんか。その代わりに国家は戦場に女を供給し、基本的な欲望を満たすように配慮もしますし」

言うまでもないことだが、安倍首相がこうした発言を行ったり、著書でこうした見解を披歴したことは一度もない。

安倍首相の著書や百田尚樹氏との対談集などを読んでみても(読むまでもないが)、こうした記述はない。著者が「安倍(安培)は本心ではこう思っているのだろう」と安倍首相の心中を勝手に「忖度」し、それに非難を加えているのである。安倍首相本人がよく言う「印象操作」の典型である。

安重根はますます激怒し、「この無学者」「アメリカの犬」「ヘラヘラしやがって」「お前は基本的な良心もない奴だ」などと言いたい放題に罵倒した後、「今日はこれで帰る」と突然消え去る。安培首相もそのまま寝台車に帰って寝てしまう。

翌朝、列車はハルピン駅に到着するのだが、そこに再び安重根が登場。安重根はやおら拳銃を取り出すと、安培を狙撃する。冒頭の引用部分がその場面である。

安重根はその場で取り押さえられ、安培は警護車両に乗せられて病院に収容された。病院に向かう車の中で、安培は「私が……反省しないのは……誤りだった……公式発表でこれが遺言だと伝えよ……」という言葉を残す。

 

裁判で「安培の15の罪悪」を陳述

中国当局に捕えられた安重根は、中国の裁判所で裁判を受ける。裁判長は孫文、検察官は蒋介石、判事に魯迅・康有為、弁護人は周恩来など。中国人の歴史的人物だが、すべて故人。なぜ、すでに物故した人物が現代に登場できるのかについての説明もない。

著者は朝鮮日報の取材に対し、「中国人も共感できるような設定にしました」と述べているので、これは中国人向けのサービスであると思われる。

安重根は法廷で安培首相を暗殺しようとした犯行動機について陳述する。

本被告が安培を殺そうとしたのは、彼が大韓民国と東アジア、ひいては世界平和にとって癌の塊のような存在であり、これを除去せず、そのまま捨て置くなら、遠からず必ず災いのもととなるため、その罪を問いただそうとしたのであります。

まるで、ISのテロリストか北朝鮮の世襲独裁者のような言われようである。ただし、韓国人の偏向した国際感覚によれば、日本は世界平和に敵対する好戦的な国家、極右である安倍首相はその首魁、という解釈が可能なので、この「犯行動機」は韓国では違和感なくすんなり受け入れられるはずである。