今週も憲法改正問題について書く。多くの人は憲法9条と聞くと、つい戦争放棄などを定めた条文に目が行ってしまう。だが、実はそれよりも「国連憲章」をしっかり読んだほうがいい。平和を実現する考え方は、そこに示されているからだ。
日本国憲法には、国連憲章の考え方が色濃く反映されている。象徴的なのは、他国への武力行使を原則として禁じた憲章第2条4項だ。それは、こう記している。
ここにある「武力による威嚇又は武力の行使」という言葉には聞き覚えがあるだろう。憲法9条にも出てくる文言だ。9条1項は次のように書いている。
これを読んだだけでも、憲章2条4項と憲法9条1項の類似性は明白である。
それも当然だ。時系列を振り返ると、米国が中心になって作った国連憲章に連合国が調印したのは1945年6月だった。2カ月後に日本が降伏し、連合軍総司令部(GHQ)最高司令官だったマッカーサー将軍は翌年2月に日本政府に憲法草案を提示した。
政府はマッカーサーの草案を多少、手直ししたが、骨格はそのまま受け入れた。占領軍の指示は拒否できなかったからだ。それで「戦争放棄」や「戦力不保持」「交戦権の否認」などが決まった。
「戦争放棄を掲げた日本の憲法は世界のお手本だ」などと語る人々もいるが、戦争放棄は日本国憲法が世界に先駆けて掲げたわけではない。先に国連憲章が戦争を禁止している。付け加えれば「戦争の違法化」は国連憲章が最初でもない。1928年のパリ不戦条約で初めて明示された。