自衛隊「ヘリ炎上事故」を経験した記者が分析する「本当の墜落原因」

なぜ整備ミスは見落とされるのか
半田 滋 プロフィール

慣れがミスにつながるとすれば、常に緊張感を維持した上での整備が求められるのは言うまでもない。防衛省は陸海空の三自衛隊が保有するすべてのヘリコプターの点検を開始した。国防に穴が空く心配について、村川豊海上幕僚長は6日の記者会見で「3日間で点検を終え、国防に極力影響が出ないようにする」と話した。

「常識外れの高値」で買わされそうに…

ところで、前述した通り、AH64は不遇な機体だった。陸上自衛隊は2001年の機種選定の際、米陸軍が採用し湾岸戦争で使われた実績があることや、全天候で索敵できる射撃統制レーダーを搭載した「世界最強のヘリコプター」であることを決め手と考えて、採用した。

問題は価格だった。既存のAH1が1機約30億円だったのに対し、AH64の価格は2倍の約60億円。しかも価格は年を追うごとに高騰した。

2008年度防衛費の概算要求では1機83億円となり、さらに調達断念を決めたことから、ライセンス生産している富士重工業の設備投資などの経費およそ400億円が、08・09年度で調達する3機の価格に上乗せされた。そして結局、08年度のAH64は、事実上「1機260億円」という常識外れの高値となり、この年は購入を断念せざるを得なかった。のちに価格を見直して調達したのである。

 

調達断念の理由は、製造元の米ボーイング社が陸上自衛隊の調達した「ブロック2」という型番の機体の生産をやめ、「ブロック3」に移行すると決定したことによる。富士重工業でブロック2を造り続けた場合、米国製部品の値段が跳ね上がり、調達を継続できないほどの高値になることが判明したのだ。

米ボーイング社は「陸上自衛隊の調達開始から20年間はブロック2を製造する」と約束していたが、米国防総省がAH64を含む兵器類を見直したことを受け、ボーイング社もブロック2の製造中止を決めた。

この事例からもわかる通り、防衛省が航空機を導入する際、毎回のように浮上するのが見通しの甘さだ。価格高騰を見通せなかったのはAH64が初めてではない。例えばF2戦闘機も予定では1機約80億円のはずだったが、最高で122億円まで値上がりした。

また、今年1月に三沢基地に1機だけ配備されたF35戦闘機は、いまだに機関砲と短距離ミサイルが撃てない「ただの飛行機」のままとなっている。防衛装備庁によると、ソフトウェアはようやく完成したものの、来年3月、10機態勢で発足するF35の飛行隊編制に間に合うかどうかは不明という。

どこか「人ごと」のような空気が漂うのが防衛省の武器購入の特徴といえる。

「虎の子」のAH64は13機のうち1機が失われた。何より大事な隊員2人が亡くなり、自衛隊が守るべき国民に被害を与えた事実は重い。防衛省・自衛隊は緊張感と使命感を持って、国防の任務に向き合わなければならない。