自衛隊「ヘリ炎上事故」を経験した記者が分析する「本当の墜落原因」

なぜ整備ミスは見落とされるのか
半田 滋 プロフィール

筆者が体験したハワイの事故には、おまけも付いた。防衛庁が2000年12月、SH60をライセンス生産していた三菱重工業に「製造上の過失があった」として、同社を相手取り、約12億円の損害賠償請求訴訟を起こしたのだ。製造上の問題での賠償請求は初めてだった。

この訴訟は、2004年5月になって三菱重工業が約4億9130万円を国に支払うことで和解が成立した。

実はAH64の墜落事故は、同機の最大のユーザーでもある米陸軍でも今年1月20日に起きている。カリフォルニア州フォートアーウィンのナショナルトレーニングセンターで飛行訓練中のAH64が墜落し、乗員2人が死亡した。米陸軍で事故原因を調べているが、陸上自衛隊のAH64の事故と共通する何らかの問題があるのだろうか。

昨年11月、米陸軍航空機部隊のウィリアム・ゲイラー司令官は「陸軍パイロットの飛行時間は、予算上の制約のため30年以上遅れている」と米議会で証言しており、在日米海軍のイージス艦が相次いで起こした事故同様、オバマ前大統領が実施した国防費の強制削減の影響があるのかもしれない。

二重、三重のチェックがあるはずなのに

近年、自衛隊の航空機事故は増えており、本年度だけでも4件起きている。新年早々、沖縄でヘリコプターを3回も不時着させた米海兵隊を非難できない。

昨年5月には北海道北斗市の山中に陸上自衛隊の連絡偵察機が墜落し、乗員4人が死亡。8月には山口県岩国市の海上自衛隊岩国基地で輸送ヘリコプターが横転して乗員4人が負傷した。同月、青森県沖で哨戒ヘリコプターが墜落、乗員3人全員が死亡。10月には浜松市の沖合で航空自衛隊浜松基地で救難ヘリコプターが墜落し、乗員4人が死亡した。今回の事故を含めると、年度内に13人が死亡している。

事故原因が操縦ミスと判明した例もあるが、今回はメインローターの不具合が関わるとすれば、同じミスでも整備ミスの疑いが濃厚となる。

 

元航空自衛隊航空事故部長の永冨信吉元空将補は「事故は整備が終わった直後によく起きる。正しく整備されたか見るのが飛行テストであり、その際に整備ミスが原因の事故が発生するからだ。飛行テストを行うのは資格を持ったベテラン操縦士なので操縦ミスは考えにくい」と話す。

だが仮に整備ミスとしても、二重、三重のチェックがあるはずなのになぜ、見落とされるのか。永冨氏はこういう。

「新しい機種を導入したばかりのころは、全員が緊張しているのでミスは起きない。今回のように導入から10年以上経過したあたりで緩みが出てくる。自衛隊は民間と違って必要な予算をとっているので、整備員の不足や整備時間の不足は考えられない。二重、三重のチェックがあるといっても、全員が見落としたり、全員がミスをしたりすることはそう珍しくない」