実力はあるのにどこからも声がかからない…「わが社の村田修一くん」

「扱いづらい」「部下に悪影響がありそう」
週刊現代 プロフィール

優秀だけど、ウチじゃない

野球も会社員の仕事も一人でできるものではない。ところが、仕事がデキる人ほどそこでカン違いが生じやすい。

「実績を残した人の中には、『自分一人で実績を出した』と考える人がけっこう多い。サポートしてくれたアシスタントや、仕事をしやすい状況をつくってくれた同僚などの存在を忘れてしまいがちです。

実はそんな仲間との関係があったからこそ、実績を出せていることがほとんど。トップセールスだった人が転職したら、組織の和の大切さを見落としたがために、鳴かず飛ばずになってしまった事例は多くあります」(前出・武元氏)

 

現在、転職求人倍率が約2倍と、いわゆる転職バブルが続いているが、現実はそう甘くない。労働環境の違い、社風との相性を見誤れば、「勝ち組」から「負け組」への転落は免れない。

「『自分は大企業に勤めていた』『これだけの仕事をやってきた』と言っても、必ずしも転職ができるとは限りません。むしろ難しいケースが多いんです。

重要なのは『そこにイスがあるかどうか』。企業にとって、実績がある人の採用が見送られる理由は、『優秀だけど、ウチじゃないよね』というものが最も多いんです」(前出・小林氏)

村田にそのイスが用意されない理由のひとつに、性格的な部分も邪魔しているという話もある。

「人柄は悪くないですが、決して面倒見のいいタイプとは言えません。勝ち越しタイムリーを打った後に、投手が打ち込まれ逆転を許すと、不貞腐れた表情を出すこともたびたびありました。これでは若手投手が萎縮してしまいます」(スポーツ紙記者)

「ややこしい」社員

ビジネスの世界でも似たような構図はよく見られる。

大手不動産会社に勤務する佐藤雅也さん(仮名)は、都心の高級マンション開発で貢献し、30代半ばながら課長候補と目され、チームのリーダーとして若手を束ねていた。

「毎日誰よりも早く出社し、帰宅は午前様という生活を入社以来続けてきました。ところが、いまの後輩は定時に出社し、定時に帰るんです。

『終わらなければ残業しろ。この数字では社長は納得しない』と、発破をかけたんですが、なかなか思うように働いてくれませんでした」(佐藤さん)

自分の仕事の時間を削ってまで熱心な指導をしてきたつもりの佐藤さんに、ある日、人事部から呼び出しがかかった。

「私の言動がパワハラに当たると複数の後輩から突き上げがあったそうです。『若手の仕事を自分の功績のように誇るのはやめなさい。それじゃあマネジメント能力がなさすぎる』と課長失格的な言いがかりまでつけられて。

どうやら、私の実績を快く思っていない副部長が『佐藤君はね、〝成功すれば自分の手柄、失敗すれば下のせい〟だからね。君たち若手にも悪影響だよな』と焚きつけやがったんです。結局、課長昇進の話は消えてしまいました」(佐藤さん)

NPBから声がかかっていない村田は、独立リーグでプレーすることが濃厚だ。会社員でいえば、大企業を辞め、中小企業で再起を図ることになる。

「大企業で実績を残したから、中小企業なら活躍できる、と甘く考えて失敗するケースがあります。

商社で法人営業をしていた40代の水谷正志さん(仮名)の主な仕事はルートセールスだったので、顔馴染みの得意先を訪問するだけでよかった。経費精算やコピー取りなどはアシスタントに任せていました。

ところが中小企業に転職すると、何から何までひとりでやらなければならない。当然、業務効率も下がり、細かい仕事への不満もたまっていく。

これでは、前職ほどの能力を発揮できず、会社としては期待外れに。年齢も年齢なので新たな転職は難しい状態で、もどかしさを感じながら仕事をする事態になったのです」(前出・黒田氏)

今後は、メガバンクなどでの人員削減が続々と始まる。みずほフィナンシャルグループは2026年度までに1万9000人を削減する計画を打ち出している。

「もちろん給料はガクンと減りますが、それだけでは済まされません。彼らが転職するのは、まだ成長途上の会社がほとんどでしょう。そうなると、『メガバンクではこんなことはなかった。こうあるべきじゃないか』と、やらかしてしまうんです。

そうすればすぐ社内での居心地は悪くなり、1年足らずで再び転職活動をするハメになりかねません」(前出・小林氏)

絶対に替えがきかない圧倒的な能力があれば話は別だが、同じ実力を持つ二人がいれば会社は従順な若手を選ぶ。時代や会社の変化に順応しないかぎり、そこそこできて「ややこしい」社員は「村田くん」のような憂き目に遭ってしまうのだ。

「週刊現代」2018年2月17日・24日合併号より