実力はあるのにどこからも声がかからない…「わが社の村田修一くん」

「扱いづらい」「部下に悪影響がありそう」
週刊現代 プロフィール

村田で言えば、球団からの評価と自己評価のズレが、現在の状況を生んでいる側面もある。

FA=転職が間違いだった

'11年、横浜からFAで巨人入りを果たしてからの村田には立て続けに〝刺客〟が送られてきた。

ここ最近では、三塁のレギュラー争いに若手の岡本和真を送り込まれ、それを実力でねじ伏せたが、助っ人のマギーが加入、レギュラーの座を奪われてしまう。

「他球団に比べ、巨人はまさに日本型経営企業と言えます。阿部慎之助選手の成績が低迷しても、生え抜きなので大事にする。村田選手はいわば外様です。

欧米企業のように生え抜きも外様も関係なく、能力のある選手を優先的に使う日本ハムや楽天などに移籍していれば、また違った野球人生になったかもしれません」(人材スカウト会社「半蔵門パートナーズ」武元康明氏)

しかし、村田が最もこだわったのは、強いチームに移籍し、優勝を経験することだった。言ってみれば、自らの実力を頼りに巨人という「大企業」に飛び込んだのである。

「優勝する確率が高いという理由で巨人を選択した場合、自分がそこにフィットするかどうかが二の次になっている可能性があります。つまり、レギュラーの保障はないという事態になりかねない。

会社選びでは、有名企業であればあるほど、そういうことが起こりやすいんです」(転職支援サービス会社「ルーセントドアーズ」代表・黒田真行氏)

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授・野田稔氏が続ける。

「村田選手の場合、どんな環境であれば自分が輝けるのか、その企業はそれが実現可能なのかという比較優位が保てなかったのです。

ビジネスの世界においてもそれは同じです。大企業に転職したとしても、比較優位を保つ意識を持たないかぎり、大きな挫折が待ち受けています」

 

慶應大学卒業後、医療器具メーカーに就職した川口雄也さん(仮名)は、九州地方を担当すると、入社1年目からトップクラスの営業成績を挙げ、エースが集まる東京に赴任する。

「東京でもすぐにトップの成績を収めることができました。内務官僚みたいな同輩のやっかみが耳に入ることもありましたが、『負け犬の遠吠え』の類だと気にも留めなかった。

しばらくすると、私の営業成績が社外にも届いたようで、大手生命保険会社からヘッドハンティングされたんです。保険の世界は素人同然でしたが、同じ営業ですし、なにより800万円だった年収が1800万円という破格の条件でしたから、二つ返事で転職を決めました」(川口さん)

しかし、その自信はあっけなく崩れてしまう。意気揚々と臨んだ転職1年目は、ノルマの半分しか達成できなかった。

「このままじゃいけないと死ぬ思いで働きましたが、上司からは『君は前職のプライドを引きずっている。そんな尊大な態度のままじゃ、ウチの会社では通用しない』と、ダメ社員の烙印を押され、相手にされなくなりました。

親戚や学生時代の友人たちにまで『保険に入ってほしい』と言って回ってしまいました。そのせいで、プライベートの人脈まで失ってしまいました」(川口さん)

追い込まれた川口さんは、仕事のストレスを家庭に向けるようになってしまい、結局、妻から離婚届を突きつけられてしまう。二人の子どもとも離れ、独り身に。現在は退職し、静岡にある実家のお茶畑を手伝っている。

ひょっとしたら、村田も前職(横浜)でのやり方をそのまま巨人という「大企業」で続けてしまっていたのかもしれない。