米国の“鼻血パンチ”作戦で「第二次朝鮮戦争」勃発の可能性

平昌五輪の裏で米中朝が不穏な動き
津上 俊哉 プロフィール

ブラッディ・ノーズ作戦の根源的な矛盾

これから先、事態はどう展開するのだろうか。

ペンタゴンが主張する通り、限定的なブラッディ・ノーズ作戦によって、北朝鮮に大規模な反撃を自制させるのは言うべくして困難だろう。と言うより、根本的な矛盾があると思う。

端的に言えば「限定的な」とは、金正恩が「米軍が自分と体制を抹殺しに来た」と勘違いしないようにするということだ。「抹殺される訳ではない」と信じれば、破滅確実な核ミサイルのボタンを押すことはないだろう。しかし、「限定性」を強調すればするほど、北朝鮮に核ミサイル開発を断念させる力も弱まる。

だったら何のために攻撃するのか。量産体制が整いそうになる度に「積み木崩し」みたいに施設を破壊して配備先延ばしを図る? 金正恩だって馬鹿ではない。米軍が2度と「限定的な攻撃」をしないように、「限定的」で巧妙な報復を考え出すのではないか。

例えば北朝鮮がやったと断定できないようなテロを韓国や日本で実行し、両国の厭戦気分を高めるとか…。

 

株暴落の影響がどう働くか

米国がどう出るか、最後は予測不能なトランプ大統領の決断にかかってくるが、筆者はあることを思いついてから、トランプだってそう軽々に軍事作戦にゴーアヘッドをかける訳ではないだろうと期待してきた。株価である。

日米の株価は年明けから一段と上げた。牽強付会する気はないが、上げ要因の一つは「南北融和によって(少なくともオリ・パラが終わるまでの間は)朝鮮半島有事といった出来事はなさそうだ」という期待感だったのではないか。

だとすれば、「逆もまた真なり」で、有事の緊張が高まれば株価に悪影響が出るだろう。マーケットが本当に「戦争が近い」と織り込み始めれば株価の暴落だってありうるはずだ。

今年11月には米国で中間選挙がある。トランプがどこまで「共和党は大切な与党だ」と思っているかは分からないが、「北朝鮮での戦争」が原因で株価が暴落すれば中間選挙、さらには2020年の自分の再選だって危なくなる。共和党が大敗すれば弾劾される危険も増す。

だから、「株価への障り」が気にかかって、トランプも軍事オプションには意外と慎重になるのではないか……そう考えてきたのだ。

そうしたら、今週、オリ・パラが始まる前に株価が暴落してしまった。

ついこの間まであんなに強気だったマーケットが、金利が上がっただけでこれほど弱気に転ずるものかと可笑しくなるが、いずれにせよ、不安心理の蔓延する市場環境では「戦争が近い」という流れを作ることは難しくなったのではないだろうか。

それで「第二次朝鮮戦争」の危険がほんとうに低下するなら、ひと一安心だが、そうとばかりも言えない。

金正恩はこの株暴落騒ぎをどう見ているか。

8日は北朝鮮の「建軍記念日」に当たる。噂されてきた軍事パレードをやるかどうかは知らないが、金正恩が演説をするかも注目だ。そこで「鉄は熱いうちに、マーケットは怯えているうちに打て」とばかり、戦争リスクを故意に煽る演説をしたりしないだろうか。

だいたい今回の「南北融和」劇での北朝鮮の態度はヘンだ。

経済的な見返りは得られないうえに、米韓両軍は「オリ・パラが終われば軍事演習を再開する」と公言している。

これまでの北朝鮮なら、いちいち反発して「参加は取りやめだ」などと揺さぶりをかけてきそうなものだが、沈黙している。

文在寅だけでなく金正恩も米中両国の様子から「本当に攻撃されそうだ」と身を固くしているのかもしれないが、そこに来てこの株価暴落騒ぎが起きた。

戦争リスクを煽る演説で世界の株価がさらに暴落すれば、我慢を重ねてきた金正恩は高笑いするだろう。「トランプよ!アンタの手中に軍事攻撃なんてカードは無いんだよ!」とばかりに。

今日はそんな展開にならないようにお祈りしたいが、2018年最大のリスクは、やはり北朝鮮問題だ。