「見えないところを見る」教育

行かなくなった理由は、生活指導の教師に体罰を受けたことでした。中学には校則があります。体育館に全員集められて集団行動を学びます。そこに生活指導の先生が入ってきて、レイに「お前は校則違反の靴下を履いている」と言いました。校則は白なので、レイが白くない靴下を履いていると注意したのです。

それでもレイは「白です」と答えました。先生は「なんでこれが白やねん、嘘つくな!」と怒ったそうです。しかし白なのです。白だけど、親が洗濯をしない。洗濯機がないのです。大空でも、ひとつかふたつしかない靴下を、「明日は洗いや」と言われながら水で洗い、生乾きで履いてきていました。だからグレーだったりまだら模様だったりするのです。

でも元は「白」です。地毛なのに「なんで染めてくるんや!」というのと同じです。生活指導の先生は「嘘つくな!」と怒り、体操服の首根っこを引きずり出そうとしました。レイは靴を脱いだらすごい臭いもするであろうこともわかっている。思春期ですし、みなの前で靴を脱ぎたくない。先生は引きずり出そうとする。そうしているうちに首が締まり、息がつまって倒れてしまいました。

こうしてレイは中学に行けなくなりました。

その後、レイは別の中学に転校して、施設にもお世話になりながら中学3年生まで学びました。私はその間一度も会っていませんでした。

中学に行けなくなった本当の理由

レイが中学3年生になったとき、私は大空を退職しました。レイが私に会いたがっていると聞き、久しぶりにレイに会いに行きました。

ものすごく大きくなっていました。「あんた大きくなったなあ!」と言いましたら、彼はこう答えました。

「そら、1日3回ご飯食べれてる」

そのあとレイは私に足の裏を見せました。「あれ、臭ないな」と言いましたら、

「毎晩お風呂入っとる」

と答えました。

お風呂に入れているから臭くない。入れないから臭い。それが分かっていれば、子どもは排除しません。先にお伝えしたように、「学校で足洗え」と子どもたちも言えるのです。むしろ、「臭いから洗いや」と平気で言える環境であることが大切なのです。

しかしレイが足の裏を見せた理由は、臭いをかいでもらうためではありませんでした。「ちゃう、かかと見て」というので見てみると、足のかかとにひどいケロイドができていたのです。中学で体罰を受けたときのものでした。かかとにケロイドができるほどの力で、引きずられていたのです。

レイは生活指導の先生に首を絞められたいきさつも改めて話してくれました。そしてこう言いました。「おれは次の日から学校に行ったらアカンと思って、学校には行かないことにした、そうやって出した答えが正しかったのか間違っているのか、ずっと考えているけどわからん。先生どう思う? 先生の考えを聞きたかった」

行かなくなった理由を聞かないと私の考えも言えません。

レイは生活指導の先生にひっぱられた時に担任の先生がいたことも教えてくれました。担任の先生はレイの味方で、靴下が本当は白いことも知っています。だから先生が「校則違反ではありません」と言って守ってくれるのかと思ったのだそうです。しかしそのまま気を失ってしまい、起きたら保健の先生しかいなかったと。その翌日から「学校に行ったらあかん」と思ったのだというのです。

「レイ、あんたそんなヘタレか? 担任の先生に守ってもらえなかったくらいで!」

思わず私はそう言いました。ところが戻ってきた返事は、とても意外なものでした。

「ちゃうねん。担任な、生活指導の先生から俺を守りたかったに違いない。ただな、担任、若いねん。生活指導の先生、年いったえら~い先生やねん。若い先生が年いった先生に『やめたって』って言えなかったんや。でも次の日俺が行ったら、担任は守りたかった俺を守れなかったって、苦しいやろ? だから俺は行ったらあかん、と思って行かんかった