1988年ソウルと2018年平昌の「温度差」はどこからくるのか

北への低姿勢に「平壌五輪」と揶揄され
崔 碩栄 プロフィール

北朝鮮選手団のニュースばかり

さらに、大会期間と重なっている正月連休の影響も無視できない。

陰暦の正月は韓国人にとって最も重要な祭日である。平昌オリンピックは2月7日~2月25日の競技を予定しているが、その真っ只中の2月15日~18日が正月で、通常この時期の韓国ではほとんどの企業や店舗が一斉に休暇を取り、人々は帰省したり、あるいは旅行に出かける。

彼らが平昌へ足を運んでくれれば大会は成功を収めることが出来るかもしれない。だが最近はこの連休を利用して海外旅行に出かける人も増えていて、毎年、国際空港の混雑ぶりが話題になっている。海外から平昌へ向かう人々と、海外旅行に出かけようとする韓国人でごった返す空港を想像するとこちらも心配になる。

正月連休に田舎へ帰省して、久しぶりに顔を合わせた家族とテレビで観戦しながら盛り上がることならあるかもしれないが、果たしてこの時期にどのくらい国内からの集客が見込めるというのかについては疑問が残る。

 

最後に、オリンピックの話題を全て北朝鮮に持って行かれてしまったという事実だ。

オリンピックの開幕直前といえば、官民一体となって雰囲気を盛り上げる時期ではないだろうか。通常であれば広報イベントが企画され、TVでは競技のポイントを紹介したり、有名選手のこれまでの活躍や努力してきた姿を紹介するような特集番組が組まれるなど、国民の関心を呼び起こすことに総力を挙げる時期だ。

ところが今、韓国での最大の関心事は、開催の僅か1ヵ月前に唐突に提案され決定した北朝鮮選手団と応援団の参加についてである。

新聞もTVも、大会の広報や元々参加が決まっていた各国選手団の紹介などはそっちのけで「北朝鮮」代表団の話題ばかりを連日伝えている。韓国政府の動きを見ても、大会自体よりも北朝鮮の参加に関わる対応ばかりに集中しているように見えるのだ。

北朝鮮選手団 photo by gettyimages

韓国政府は北朝鮮との対話を重視し、協力をアピールしているが、韓国社会には依然として、北朝鮮に対して否定的な認識を持つ人が少なくない。特に20-30代は北朝鮮の大会への参加や混合チームの結成に否定的な意見、不満の声が高い。少なくとも、このような意見を持つ人たちが、日々流される北朝鮮選手団のニュースを見ても、盛り上がるどころか、オリンピック離れを促進する効果しか生まないだろう。

このような幾つもの条件が、チケット販売の不振につながっていることは明白だ。政府は韓国企業に支援を求めているが、大統領側近の関わる体育基金に支援をしたという理由で拘置所に1年近く拘束されていたサムスン副会長の事例を思えば、多くの企業が政府の求める支援に二の足を踏んでいるのも無理からぬ話だ。

それでも一部の企業や自治体はチケットを購入し、多文化家庭や低所得層に配っているが、それも平昌の会場への集客にどれだけ繋がるのかは未知数だ。

自治体がチケットを無料で配布したとしても、交通費、宿泊費は自分たちで負担しなければならない。特に高騰が問題視されている宿泊費を低所得層の人々が準備することは簡単ではないだろう。残念ながら彼らが気軽に会場に足を運ぶとは思えない。

大会を直前に控えた今、韓国のインターネットサイトでは定価以下のチケットが大量に出回っている。そしてその安いチケットすら、売れ残っているのが平昌の現状だ。

ネット上に出品されている開幕式と閉幕式のチケット。各々150万ウォン、95万ウォンのチケットだが、合わせて70万ウォンで出品(写真:著者提供)