障害者とともに一流のスイーツを作る「久遠チョコレート」の挑戦

「障害があるから低賃金」を乗り越えて
なかの かおり プロフィール

偶然生まれた人気商品

世界30か国のカカオを使って、余分な油分を加えない。コンセプトは、生チョコやトリュフよりもカジュアルなもの。カカオの多様性を楽しみ、日本の食材も生かす。野口さんが、そんなオリジナルのレシピを提供してくれた。

横浜店でも人気のテリーヌは、京都店で偶然に生まれたそうだ。店舗に野口さんが来てくれたが、温度の調整がうまくできない環境だった。テリーヌなら、調整して溶かすテンパリングをしすぎても大丈夫で、逆に独特の食感が生まれた。

 

通常はチョコレート作りに冷蔵庫を使わないが、これはある時間まではあえて冷蔵庫に入れるという。型に入れて固めるので、自由自在にバリエーションを出せる。国産の柚子(ゆず)や日本茶など各地の特産品を使って、地域おこしにもつながる。

これが人気の「テリーヌ」。様々なテイストと食感があってどれも美味しい。ラッピングのセンスもいいので、ギフトに人気だ 写真/なかのかおり

工賃アップ、バイヤーにも人気

障害者を一流のショコラティエにと呼びかけると、輪が広がった。京都のフランチャイズに続き、豊橋の本店、直営店の横浜とオープン。全国に福祉事業所のフランチャイズも増えた。1月には長崎市と佐世保市でもスタート。熊本市の店舗は、引きこもりの人たちを支援するNPOが運営している。

現在、直営店とフランチャイズ店を合わせて全国に27店。フランチャイズは、やりたいと手を挙げた福祉事業所やNPOに、ラ・バルカが道具やノウハウを提供している。販売のみの店舗もある。

働く障害者は合わせて140人で、発達障害や知的・精神障害のある人が多いという。サポートスタッフは100人ほど。直営店は直接雇用で、フランチャイズの福祉事業所は工賃を払う形になる。障害者の給料(作業所の場合は工賃)は、昨年末で月平均4万8千円だった。全国の作業所の工賃が平均、月に1万円代というから、高額なほうだ。

評判を聞いた百貨店のバイヤーから、アプローチが相次いだ。伊勢丹、三越、小田急などに誘われて出店。今年は、イトーヨーカドーから声がかかった。ヨーカドーの22店舗に、久遠チョコレートをディスプレイしたショーケースが並ぶ。パッケージは全国から募集した障害者によるアートで、にぎやかなデザインになっている。

社会を変えるブランドに

久遠チョコレートは、これまでの売り上げが約4億円となった。現在、開かれている名古屋高島屋のチョコレートの祭典に初出店を果たし、国内外150のトップブランドがそろう中で、30位の成績を出しているという。

だが課題もある。夏目さんは、「人気が出て、生産が間に合っていない。フランチャイズ店一つひとつの生産率が低いんです。民間企業なら人員を増やしてがつがつと生産します。福祉事業所は給付金があって成り立ちますし、簡単に事業を広げられません。どうやって事業力をつけていくかは課題ですね。私たちもサポートしていきます」と語る。

そうした支援や新店舗の立ち上げに全国を飛び回る夏目さん。2月を前に、名古屋高島屋での好成績を受けて自身のブログに熱いメッセージを寄せた。

障害ある彼らの仕事が、単なる社会貢献の一環として助けてあげる対象から、一流の仕事として正当に評価された瞬間でもある。こうした、誇り高き瞬間を、人から真に認められた瞬間を、人から必要とされた瞬間を、たくさんたくさん創り出し、喜びを心から味わえるように共に歩みたい」

そして夏目さんは、こう結んだ。みんなで一緒に、社会を変えるブランドになってみせる